次の点についてお伝えします。
・この本の気になった点を3つご紹介
私自身、ビジネス書などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。
この本の面白いところは、少し昔の話から含めてお話が入っていることです。
つまり、今にいたるまでのネットの概要を含めながら、そしてそれらを分析したものを1冊にまとめてあります。
ポケベルの話や、楽天ができたり、iphoneが出てきたりというのはその当時から体験している人にとってはわりと普通ですが、20代の人にとってはどれも新鮮な話のように思います。
私のような40代でも興味深い情報も多かったです。
中国ではやっていることや、アメリカの会社の社名が変わることの意味から、何を目指しているのかといった視点などです。
また、既にあるサービスについて、それぞれを客観的にとらえている視点が参考になりました。
この記事は1,2分で読めますので、もしよろしければ目を通していただければと思います。
目次を最後に載せております。
書評「買い物ゼロ秒時代の未来地図」【ネットでの買い物の概要をつかめる】
著者 望月智之
出版 クロスメディアパブリッシング
2021年2月1日 初版発行
クラウドファンディングの商品とメーカーの商品
メーカーの商品は、品質は高いが、コンセプトが弱いことが多い。
クラウドファンディングから出てくる商品は、コンセプトはいいが、品質は高くないことが多い。
もちろんすべての商品がそうとは限らないが、大きく分類するとそうした分布になる。
生活者が理想とする「コンセプトと品質の両立した商品」はつくるのがなかなか難しい。
そんな状態にあっては、理想の商品を探すのも簡単ではない。
出典 買い物ゼロ秒時代の未来地図 P.045
クラウドファンディングが流行り始めたのはここまだ10年程度です。
現時点ではクラファンで作ったものの品質が高くないことが多いというのは、品質管理や運用テストがユーザーが求めるものに追いついていないということです。
どんなメーカーであっても最初は作るのが手一杯でどうしても、品質は二の次になりがちです。
大手メーカーの品質が高いのは何十年にもわたって、部品会社の選定から製品をくみ上げたあとのテストまで含めた工程が充実しているからです。
中国のメーカーにメール一つで製品が作れるようになっているとは言われていますが、そういう部分ではまだまだのところがあります。
ただ、世の中の多くのものは中国製です。
品質の高い製品が世の中に存在しないというのならばまだまだ時間はかかると思いますが、既に大手メーカーで品質の高い製品ができているということは情報が伝達されることで解決していくものです。
また品質についても、将来的に、例えば医療機器や航空機にもとめられるものと、民生品に求められるものは異なりますので、すみわけはできていきます。
大手メーカーでありながら面白いモノを作る会社といえば、最近だと中国のDJIなどがあります。
このDJIの品質は高いし、ドローンをはじめ面白いものを作っています。
面白いモノ、つまりコンセプトがよくて、品質も高い製品は今後ますます増えていくでしょう。
店員不要論
実店舗の棚がデジタルシェルフに移行する中で、「そもそも店員は必要なのか」という議論が、ここ数年続いている。
生活者が店舗に行かなくなったのはなぜなのか、各種アンケート結果を見ても、必ずといっていいほど上位に入っているのが「店員の接客がわずらわしい」といった回答である。
店員に売り込みされるのが心地よくないと感じる人が多いということだろう。
店員不要論が起こるもう一つの要因として、「店員よりも顧客のほうが商品に詳しくなっている」ということも挙げられる。
出典 買い物ゼロ秒時代の未来地図 P.061
実際、店員がほぼいない店舗としてIKEAがあげられます。
別にIKEAの店員に話を聞かなければ困ることはあまりありません。
商品は事前にネットで見ることができます。
それで、大体のめぼしをつけてから実際に見てみて、自分で必要な商品のカードをとって、倉庫のフロアーで積み込むだけです。
この机とこの机、どういう機能が違うんですか、というようなことが家具ですから起こりません。
IKEAの中には、高級机と安い机というようなランク付けがないからともいえます。
高級家具の場合、同じ机であっても使っている材質が異なることや、木の原産地が異なるといった細かい点で差があったりするために店員が必要になります。
ただ、原宿にあるようなIKEAは通常の大型店舗のIKEAとコンセプトが異なりますので、店員がいます。
通常のIKEAは郊外にあることが多いです。
そのため、都心に住んでいると近くにないために行ったこともない人が多いからです。
原宿や渋谷にあるIKEAは、そういった行ったことのない人にIKEAの製品を体験してもらうという目的があります。
そこで注文しても良いですし(自分で倉庫フロアーから運ぶのではなく)、あとでネットから注文という方法もとれます。
家電屋などを考えても、わざわざ店員に聞かなければならないようなことは今はほぼないです。
必要な情報はすでに、店舗に行く前に収集できていることが多いからです。
そうすると、在庫や展示している場所を聞くくらいになってしまいます。
あとは値切る交渉をしたいという人もいるかもしれません。
私自身、大学時代に電気屋で4年ほどアルバイトをしていましたが、価格交渉がめんどうだったのを覚えています。
あとは商品陳列や掃除、配送、ローンの手続き、エアコン工事の見積もり、携帯の手続きなど、手続き関連は人手が必要でした。
店員が必要かどうかということであれば、陳列、配送、手続きのためには結局必要であることは変わらないです。
ただ、商品説明のために必要かどうかは別ですが、まだしばらく、店員から話を聞きたいという人やネットでの購入が難しい人もいるので必要にはなります。
社名変更の意味
たびたび取り上げているウォルマートだが、2018年2月に社名変更をしている。元々の社名「ウォルマート・ストアーズ(Wal-Mart Stores' Inc.)から、「ウォルマート(Walmart Inc.)」へと変更したのだ。
パッと見たところ、それほど大きく変わっていない。「ストアーズ」が抜けただけだ。ただ、私はこのことに大きな意味が込められていると考えている。そもそもウォルマート・ストアーズの「ストアーズ」には、店舗を広く展開していくことが事業の中心であるという意味が込められていたはずだ。そこから「ストアーズ」を取り除いたということは、ウォルマートは「店舗にこだわらない」と宣言したことに等しいことなのだ。
出典 買い物ゼロ秒時代の未来地図 P.126
ここでは他にも、2007年にアップルコンピュータがアップルに、2017年にテスラモーターズもテスラに変わっていることが例にあげられています。
それぞれの、「コンピューター」や「モーターズ」をとることによって、より広い分野まで事業を広げるという意味を持っていると言われています。
これは随分と先を見ているとも言えますし、逆にその先の未来を見据えていないと、とることができないです。
その後ろの言葉をとるということは、どこに向かうのかを示さなくなります。
示さないからこそ、より行先をはっきりさせる必要があると言えます。
ウォルマートについては、「店舗」をとったということは、ネット上でも展開するという明確なメッセージととることは確かにできます。
ただ、こういったことはそれほど新しい話ではなく、古くは台湾の企業に買収された早川電機がシャープ電機になり、シャープになっていますし。
ソニーだって、創業時は東京通信工業ですよね。
新しいかどうかではなく、このことをこの本で指摘して分析していることが面白い点です。
なんにしてもこれからますますそれぞれの企業が当初の業界をまたいだ提携などが進んでいくことになることは確かです。
このような形で、インターネット上における買い物からそれに関わる歴史的なことなども書かれています。
難しい話もなく、すぐに読める本ですので、もしよろしければ目を通していただければと思います。
目次
はじめに
序章「デジタル時代のい買い物」を科学してみる
- デジタル時代に広がる6つの「買い物の仕方」
- 兆円単位の売上が実店舗からデジタルに流出!?
- 自動化される「目的系」、SNSで広がる「発見系」
- 買い物はデジタルのあとで
- 同じ「目的系」のAmazonと楽天の大きな違い
- TikTokでバズった「泡動画」の衝撃
- SNSとの相性がいい「発見系コマース」
- 「目的系コマース」との品質の差
- 「人のつながり」よりも「コトのつながり」
第1章 2020年、私たちの買い物はこう変わった
- ついに現れた「100%ネットでの買い物男」
- 急増した近所とオンラインの買い物
- リアルの一等地からデジタルシェルフ一等地へ
- 店員のデジタル武装化はじまる
- レビューをまったく気にしない人は3%だけに
- レビューなしでは実店舗の買い物もできない!?
- オンラインで語り合う「ソーシャル映画鑑賞」
- PtoCで「一億総メーカー時代」が幕を開ける
- コロナでイノベーションは起こらなかった
第2章 生活者をつなぐ口コミはどう進化したか
- 電話の普及で最初の口コミ革命が起こった
- ポケベルで文字による「つながり」が可能に
- 情報革命(インターネット)での口コミの変化
- 匿名でもいいから「誰かの本音」が知りたい
- 口コミがビジネスとつながったブログ時代
- 日本人がTwitterを好きな理由
- 中国発ショートムービー系SNSが世界を席巻
- 今後の「口コミの一等地」はどこに?
- 口コミのソーシャル化でレビューの価値が向上
- 口コミの根っこは「間違えたくない」こと
第3章 EC先進国の米中で今、起こっていること
- Eコマース市場が伸びる中国で出店ブームの謎
- ライブコマースが日本で流行らない理由
- 店舗ビジネスが衰退する米国の「ダークストア」
- Amazonはもはや「最速」ではない
- ウォルマートは広告メディアとして成長する
- Amazon Goの「次の展開」とは?
- Amazonが与える「高い満足度」の秘密
- 大手に割って入る「goPuff」のガレージ戦略
- ウォルマートとアップルの社名変更の意味
- リーバイスが「ソフトウエア会社」になる日
- ルンバは掃除機から家のプラットフォームに
- メーカーはプラットフォーマーを目指す
第4章 リーディングカンパニーが最前線で仕掛けていること
- 「GAFAからの通知」に支配される私たち
- マックシェイクはなぜ飲みにくいのか
- 「目的を買う」ショッピングパーパス理論
- 実は意外にデジタル化が進んでいるユニクロ
- メルカリが世界の覇者になる日
- 循環を生み出すメルカリの「中毒性」のその先
- ワーク万の「1人でなく2人で来る店づくり」
- ボタニストは4点以下の商品を"出さない"
第5章 2030年、買い物の未来
- 昨日の記憶は脳の「ラベリング」が鍵になる
- 脳からデジタルへ、記憶領域の拡大
- 現実が映画『レディ・プレイヤー1』に追いつく
- 悪人も「善人にならざるを得ない」スコアリング
- 「モノを売っていない店舗」が増加する
- Eコマースに勝てるのは小商圏ビジネスの店舗
- 「目的」「発見」から次は「楽しい」へ
- 「楽しい」から生まれる、企業との「共創」
- 買ってから始まる顧客体験
おわりに