次の点についてお伝えします。
・この本の気になった点を3つご紹介
私自身、ビジネス書、技術系書籍などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。
著者の成毛さんは、元日本マイクロソフトの社長ということで紹介されることが多いです。
私もこの本以外にも何冊か読んだことがあります。
先日紹介した、「2030年すべてが『加速』する世界に備えよ」のミニ日本版という感じです。
情報量などは圧倒的に上の本が多いですが、何よりこの本は、日本の2040年を考えるという本です。
とても読みやすく、今の日本の抱えている問題の概要を知ることができます。
この記事は2、3分で読めますので、もしよろしければ目を通していただければと思います。
目次を最後に載せております。
書評「2040年の未来予測 成毛眞【日本の未来を幅広くわかりやすく解説】
著者 成毛眞
出版 日経BP
2021年3月11日 第1版第8刷発行
無人店舗のメリットは、万引きが防止できること
書店の儲けを示す営業利益率は、トーハンの「平成30年版書店経営の実態」によるとわずか0.02%にとどまる。つまり、売り上げが年1億円の書店の場合、万引きによる被害が50万円あるのに対し、儲けは2万円に過ぎないのが実情だ。利益率が低すぎると思われるかもしれないが、これは書店全体の平均だからだろう。
とにかく、いかに万引きが小売りの利益を阻害しているかがわかるだろう。
出典 2040年の未来予測 P.070
万引きがそこまでの大きな被害になっているということは書店に限らないと思われます。
化粧品など単価の高いものはもっと被害が大きいのではないかと思われます。もちろん、単価が高いものは逆に利益率が高いので、薄利多売のものの方が被害が大きく、書店は特にその影響を受けやすいとも言えます。
アマゾンゴーといった、無人店舗の実験がアメリカでも始まっています。成毛さんは、それより日本のキオスクが参考になるといったことも書かれています。既に支払い等は客がセルフレジで行い、店員は購買については何もしておらず、商品の補充等だけを行っているからだといわれています。
このページの少し手前にアマゾンゴーの仕組みが簡単に書かれています。
現在は監視カメラで監視程度ですが、アマゾンゴーなどであれば、店内に人が入った時点でその人の追跡が始まります。
入店時に自分のスマホを使っています。
そしてレジがあるわけではなく、購入したいモノを自分のカバンに入れるだけで、どの商品を取ったかどうかを画像処理することでわかり、出る時には決済されるというものです。
つまり、入場するときにすでにお財布を渡していると言えます。
万引きしようにも、その分だけちゃんと支払われるということになります。
個人の評価を数値化する中国
中国政府はこういった「社会信用体系で国民を評価すること」を打ち出しており、大手企業から入手した顧客データに加え、街中の顔認証カメラや、インターネット上や現実の世界での行動から個人を評価する「社会信用制度」の構築を急いでいる。将来的には減点や懲罰を科す範囲を拡大するだろう。
それは我々日本人からすると不気味に見えるかもしれないが、一方で、治安のよさにつながるのではという素朴な感想を抱く人もいるだろう。
実際、中国では「スコアに影響するので悪いことをすることは損」という感覚が広まりつつある。信用スコアは、暮らしやすい社会の実現をサポートすると考える人も増えている。スコアが高いと優遇されるからだ。監視カメラがあるから信号を守る。スコアが悪くなるから、ずるをしないし、お店の無断キャンセルをしない。最初はシステムとして強制されていても、なじめば、それがあたりまえになる。(中略)おそらく日本も監視カメラの設置やデータの活用は進むだろうが、人権や個人情報保護が壁になる。中国のようにトップダウンで一気には進まないので、監視カメラが整備されるエリアとそうでないエリアが二極化されるだろう。データの活用も限定的に緩やかになるはずだ。
結果として、非常に治安が良く公共意識の高い地域と、そうでない地域が鮮明に分かれるだろう。「監視カメラは気持ち悪い」という際には、そうした二極化する未来が来かねないことも認識しておくべきだ。
出典 2040年の未来予測 P.075
ヤフオクなどのインターネット上のサービスの評価と似たようなものですね。
本当にこの人が信用できる人なのかを知るための基準になります。
中国だからこそ、導入できていることですが、こういった取り組みは非常に先進的です。
「お天道様が見ている」をシステムで実現するというわけです。
実際、「お天道様が見ている」と個人的には思いますが、オレオレ詐欺をやるような人などがいるところを見ても、非常に刹那的(せつなてき)に生きている人も、まだまだ多いのだと思います。
日本は犯罪率が低いとも言われますが、電車内の痴漢などはどうなのでしょうか。先の万引きにしてもです。
そういった、見えなければいい、ばれなければいい、少しくらい、というような「小悪党」が多いような気もします。
監視カメラや個人の行いを数値化というと、嫌悪感を抱く人も多いのかもしれませんが、それにより守られるようになる部分も大きいです。
その地域の二極化についても恐らく、都心は監視カメラの普及が進むことが予想されます。
逆に普及しにくいのは、人間関係が割とはっきりしている地方かもしれません。
地方の場合は使う道路や店も限られていますので、もともと割と知っている人に会いやすく、お互いがある意味監視できている場合があります。
そうした地域に特にカメラを持ち込む方が難しいように感じます。
その点、都心はお互い知っている人同士ではないですので、お互いが安心して住むことができるために、監視カメラ等の設置などによる個人の信用の数値化も進みやすいと考えられます。
学歴の意味がなくなり不登校児も増える
2040年には、18歳の人口は今と比べて8割にまで縮む。そもそも、企業側の、学歴に基づいて大量採用して、そこから優秀なヤツが育てばいいという旧来型の採用モデルは現在でも破綻しつつある。学歴があればどうにかなる社会は、完全に過去のものになる。
就職に学歴が関係なくなるのだから、これからは、親も子どもに、それぞれが好きなことを見つけて、好きな仕事や自分の人生を創造する後押しをしてあげるべきだ。学校や塾も行きたくなければ行かなければよい。代替案としてオンライン教育が整備されるのは間違いないのだから。さまざまな理由での不登校児も増えるだろう。
出典 2040年の未来予測 P.223
昔からある企業や公務員など旧来の組織においては今でも学歴が通用します。
ただ、そういう企業や組織で勢いのあるところはあまりありません。
皆、いい企業に行くために、いい大学に行くために、いい高校に行くためにということがあって、好きも嫌いも関係なく勉強をしているところがありました。
ただ、そうではなく、学生時代をその人の得意や好きなものを伸ばす時間にあててもいいという時代になってきていることは確かです。
不登校については、本当に多いようです。
表向きに数字を学校も出さないと思いますが、昭和的な学校は今でも存在します。
イメージ的に数%くらいはいるのではないでしょうか。
実際、少し検索したところ、増加し続けているようです。
不登校の子に問題があるというより、学校が時代に取り残されているから子供たちは、旧来の学校に行こうと思わないのでしょう。
このような形で、気になる点について3つほど取り上げました。
この本はすぐに読み終えることができるくらい、読みやすいです。
日本ではなく、世界的に詳しく知りたい場合は、最初に述べた「2030年すべてが加速する世界に備えよ」をおすすめします。
目次
はじめに
#01 テクノロジーの進歩だけが未来を明るくする
- たった100年前から信じられないほど世界は変わっている
- 新しいテクノロジーが登場したとき、人間はその普及に反対する
- 新しい技術は組み合わせで現れる
- 5Gとはそもそも何で未来の何を変えるのか
- 6Gのすごさは「早く」「大量の情報のやりとりができる」こと
- 「低遅延」により、すべてのモノがインターネットに常時接続される
- 6Gで自動運転が可能になる
- バーチャルが日常になる
- 瞬時にデータを把握するのも低遅延だから可能
- 家中が便利な家電でいっぱいになる
- 現在は自動運転のちょうど過渡期
- すでに未来を変える技術はチラホラ実用化されている――ライダー
- 空飛ぶ車も2040年には可能になる
- コンビニやスーパーは無人店舗になる
- 無人店舗の研究をするならキオスク
- 無人店舗のメリットは、万引きが防止できること
- 中国と監視カメラと個人データ
- 日本の過疎化を救うのは5Gでの診療
- 医療技術はAIのおかげで格段に進歩する
- 薬もAIで効率よく処方できる
- ゲノム編集技術で難病の治療に光が見える
- 再生医療がパーキンソン病やアルツハイマー病を治すかも
- 2040年はワクチンの開発スピードが飛躍的にあがる
- 原発後のエネルギーのカギは「電池」
- 電池は日本のお家芸
- 風力発電に向かない日本の地形
- 世界で注目されるネクストのエネルギーは核融合
- テレビは絶滅しない
- 面白いテレビ番組はテレビ局以外がつくる
- ハードの「テレビ」自体はなくなる
- 新聞は絶滅危惧種
#02 あなたの不幸に直結する未来の経済――年金、税金、医療費
- 2040年の日本は老人ばかり
- 老人が増え、それを支える若者が減る
- 国の財源は、私たちの社会保険料でまかなうしかない
- すべての問題は高齢者が増えること
- 老人ホームは高い
- 将来の医療費を減らすのは、テクノロジー
- 70歳まで働くなら、今と同じ額の年金はもらえる
- そもそも、年金のしくみを知っておこう
- 年金は国から自動的にもらえるお金ではない
- なぜ日本では保険料の徴収漏れが多いのか
- 日本ですばやい経済対策ができないのはなぜか
- 会社員が最も税金を払っている
- ベーシックインカムは実現化するか
- 救世主になるかもしれない経済学理論、MMT
- 日本のGDPはお先まっくらなのか
- 地銀はすでに存在が危ぶまれている
- 教育分野は2040年は厳しい
- 退職金はそもそも払わなくても違法ではない
- 退職金は、給料が安い代わりに退職時に多く支払うことから生まれた
- 民間の保険には入らない方がいい
- 預貯金はもう意味がない
- これからの時代はテクノロジーよりも政治が株価を決める
- 資産形成したいならインデックスファンド
#03 衣・食・住を考えながら、未来を予測する力をつける
- 衣食住の未来は、短期的にコロコロ変わる
- 不測の未来を予測する力をつけよう
- 国が発展すると、肉を食べる
- 遺伝子編集した魚を食べないともうもたない
- マンションの価値は下がる
- オンライン教育はあたりまえになる
- アメリカの大学は富裕層以外は行けない
- 日本では学歴の意味がなくなる
- 大学は生き残るために専門性を高める
- シェアリングは巨大産業になる
- 貧しくなる日本にシェアリングは不可欠
- アフリカの「ストーリー」がファッションの目玉に
- #04 天災は必ず起こる
- このまま温暖化がすすむと、飢餓に満ちた世界が必ずくる
- まず自分のいる場所がどんな水域か知っておくべき
- 天災に関しては、自分できちんと判断するしかない
- 自治体のハザードマップを必ず見る
- 南海トラフ地震の際は、日本中で地震が連動して起こる可能性が高い
- 富士山が噴火すると日本中の機能がストップする
- 温暖化によって戦争が起こる
- 「水」が最も希少な資源になる
おわりに
参考文献