リンダ・グラットン 書評

書評「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略 リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット」【世代によって成功パターンが異なる】

次の点についてお伝えします。

・この本の気になった点を3つご紹介

私自身、ビジネス書、技術系書籍などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。

本文の中にあるのですが、「三人の人生、三人のシナリオ」ということで、1945年生まれのジャック、1971年生まれのジミー、1998年生まれのジェーンという3人が何度も出てきます。
物語になっているのではなく、この世代の人たちはどういう人生を送ってきたか、送っていくのか、という話になります。

この異なる世代によって成功パターンが異なる、ということを知ることができます。
この本を読んだ人が必ずしも同じ世代でなくても、近い世代だったりすることで、自分に当てはめて読むことができます。
そうすることで、例えば、自分の親の世代は、この中の誰にあたる、だからこういう風に言っているのだな、というような読み方もできます。

その結果、自分がどの世代に近いから、そうするとこれからはどういう「人生戦略」なのかということを考えることができる本になります。

偶然ですが、私が買おうか迷っているときに、1945年生まれのジャックの世代にあたる高齢の女性が目の前でこの本を買っていきました。

この記事は、2,3分で読めますので目を通していただければ幸いです。
一番最後に目次を載せておきます。

書評「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略 リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット」【世代によって成功パターンが異なる】

著者 リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット
訳 池村 千秋
出版 東洋経済
2019年6月11日 第15刷発行

スマートシティ(賢い都市)の台頭

なぜ、これほど多くの人が都市に住みたがるのか?インターネットが登場した当時、この新しいテクノロジーにより物理的な距離が重要性を失い、私たちは自分の好きな場所で暮らせるようになると言われていた。しかし実際には、確かに「遠さ」の弊害は問題でなくなったかもしれないが、「近さ」の価値はむしろ高まっている。いま世界規模で起きている都市への大移住は、新興国における農業から工業へ、農村から都市への移動がすべてではない。先進国でも都市への人口流入が起きている。これは、質の高いアイデアと高度なスキルの持ち主のそばに身を置くことの重要性が高まっていることの表れだ。

出典 LIFE SHIFT P.97

日本でも東京一点集中が進んでいるという話は聞くことがあります。もちろん、そうではなく、流出も進んでいる、という話もあります。
どれくらいの年数で見るかによって、この予想は変わると思いますが、これから10年、20年というレベルで見た時にはますます都市への集中が進むでしょう。

その理由は、都市でないと、生活が不便になるからです。
20年より先になってくると、自動配送などが進むことで、地方にいても様々なものを入手することができるようになったり、遠隔での治療などもできる可能性もあります。

ただ、それだけではない部分があります。
この本の中に書かれているのですが、結婚が「同類婚」が際立って増えているとありました。
つまり、自分が同じような人と出会うためには、都市にいた方が同じような人に出会える確率が高いということも書かれています。

そのために、仮に生活を地方ですることが困難でなかったとしても、そのまま都市に出会いを求め、都市で生活をするというケースが多いことが考えらえます。

経験学習が進む

変わるのは、どんなスキルや知識を学ぶかだけではない。学び方も大きく変わる。とくに、「経験学習」の比重が大きくなるだろう。教科書と教室での学習にとどまらず、実際の活動を通じておこなう学習のことだ。
経験学習の価値が高まるのは、一つには、インターネットとオンライン学習が発展して、単純な知識なら誰でも簡単に獲得できるようになるからだ。知識の量ではライバルと差がつかず、その知識を使ってどういう体験をしたかで差がつく時代になるのだ。

出典 LIFE SHIFT P.135

今までは、テストは知識を問うものが中心でした。それは、点数化しやすいという部分が大きかったことがあります。そして、かつては情報に価値がありました。インターネット等が進むことで、誰もが情報自体は得ることができるようになりました。
情報による差がないのであれば、それをどういうことができるかを考え、そして行動したかが問われるということになります。

今はまだ、ほとんどの学校が、どこに行っても同じようなことを座学で学ぶことが主体です。
工業高校や、美術学校、海洋高校、農業高校などある分野では経験と座学がセットでしたが、これらに加え、より実践的な学びができるようになっていくことが考えられます。

サービスを提供する側は座学が一番楽です。なぜならば、設備も施設もいりませんので。
ただ、多くの仕事が必ずしも施設が必要かというとそういうわけではなく、インターネット上での仕事が増えてきていることからも新たな学科が大学でも増えていくことが考えられます。

同じ工業関係の分野の大学や専門学校でも、ソフトや機械操作など作業に近いところから、より複雑なことを考える学校などの違いはあるでしょう。
それは、上下というわけではなく、どういう働き方がその人にとってあっているかの違いです。
今まではよくわからなかったから、学科による試験によって振り分けていました。
別に学科による試験が得意な人がクリエイティブな仕事に向いているだとか、論理的だとかそういうことは言えません。
より、その人が輝くことができる分野に進めるようになっていくでしょう。

お金持ちは長時間働きたがり、満足できる確率が高い

1930年、経済学者のジョン・メイナード・ケインズは「わが孫たちの経済的可能性」と題したエッセーを記し、経済が豊かになれば余暇時間が増え、そうした自由な時間をどのように使うかが人類の大きな課題になると述べた。(中略)

人々は余暇も含めて大半のものを多く消費したがるようになったが、人々が主に欲しがったのは物質的なモノだった。余暇時間よりずっとそれを強く欲した。その結果、労働時間は、ケインズが予測したほど急激には減らなかった。たくさん消費し、物理的なモノを所有したがる人ほど、その購入費用を得るために、長時間働かなくてはならないからだ。(中略)

1世紀前、長時間働いていたのは貧困層・低スキル層だった。産業革命により生まれた工場で長時間働くのは、そうした人たちだったのだ。一方、富裕層・高スキル層は短時間しか働かなかった。アメリカの経済学者ソースティン・ヴェブレンの言う「有閑階級」はその究極の形だ。有閑階級の暮らしぶりは、テレビドラマ「ダウントン・アビー」を見ればよくわかる。
しかし、1990年代頃、貧困層・低スキル層と富裕層・高スキル層の労働時間が完全に逆転する。低賃金の人たちが短い時間しか働かず、高賃金の人たちがそれより少し長く働くようになったのだ。しかも、賃金が高い人ほど、労働時間が長くなる傾向がある。(中略)

しかし、さまざまな研究によれば、高賃金の職についている人ほど、仕事に満足していることがわかっている。高い給料が満足感を高めるのかもしれないし、主に頭を使う非定型的な仕事が満足感の源になっているのかもしれない。いずれにせよ、ほかの条件が同じなら、仕事への満足度が高い人ほど、長時間働いてもいいと感じるようだ。

出典 LIFE SHIFT P.294-299より一部抜粋

日本においても、多くの人の余暇時間が50年前と比べて増えていることは確実かと思います。ただ、働く時間が減ったかといえば、賃金が高い人ほど多く働いているように感じます。

ただ、その中身が変わってきているということが言えます。従来であれば、誰にでもできる仕事を長時間、誰がやってもいいということで大量に雇用し、終身雇用、年功序列にてまわしていくという形が主流でした。今でも昔からある日本の企業の大半はその形です。

しかし、そこで満足が得られるかと言えば、それは難しいです。
サラリーマンの多くは殆どが代えがきくようになっています。

つまり、その人がいなくなっても別の人がやればまわるのです。
たまに、「自分がいないと、この組織はダメになる」なんて言っている人もいますが、多くの場合はそういう人からリストラに合います。人に言っている時点で認識がズレているからです。

ただ、世の中の仕事においては、本当にその人じゃないとできない仕事は存在します。
そういう仕事をしている人というのは、当然やりがいもあります。
また、代えがきかないからこそ、給料も高くなる傾向にあります。

これからの仕事のスタイルはそのようになっていくのでしょう。
それも含めて、給料の高い人は上にあるように満足度も高くなるのでしょう。

簡単に3つ気になった点を上げました。
本当は、3世代出てきて、それぞれについて、この世代においてはこの形が勝ちパターンだったけど、この世代では通用しないというようなことがわかる部分が多い本です。

もしよろしければ、手にとって読んでいただければと思います。

目次

日本語版への序文

序章 100年ライフ

  • オンディーヌの呪い
  • 100年ライフでなにが変わるか?
  • あなたの100年ライフをつくる本

第1章 長い生涯ーー長寿という贈り物

  • 平均寿命は今後も伸びる
  • 健康な期間が伸びる

第2章 過去の資産計画ーー教育・仕事・引退モデルの崩壊

  • ジャックーー3ステージの人生の世代
  • ジミーーー3ステージの人生が軋む
  • ジェーンーー3ステージの人生が壊れる
  • 3ステージ型仕事人生に別れを

第3章 雇用の未来ーー機械化・AI後の働き方

  • 新しい産業とエコシステム
  • 雇用なき未来がやってくる?
  • 仕事の未来はどうなるのか?
  • ジェーンへの助言

第4章 見えない「資産」ーーお金に換算できないもの

  • 人生の「資産」を管理する

1 生産性資産

  • スキルと知識
  • 仲間
  • 評判

2 活力資産

  • 健康ーー脳は鍛えられる
  • バランスの取れた生活
  • 自己再生の友人関係
  • ジャックの無形の資産
  • 3ステージの人生で失われるバランス

3 変身資産

  • 自分についての知識
  • 多様性に富んだネットワーク
  • 新しい経験に対して開かれた姿勢

第5章 新しいシナリオーー可能性を広げる

  • ジミーが送ってきた人生
  • 3.0シナリオ
  • 3.5シナリオ
  • 4.0シナリオ
  • ジェーンの人生シナリオ
  • ジェーンの4.0シナリオ
  • 5.0シナリオ
  • ジェーンとほかの世代の決定的な違い

第6章 新しいステージーー選択肢の多様化

  • 若々しさ
  • エクスプローラー
  • インディペンデント・プロデューサー
  • ポートフォリオ・ワーカー
  • 移行期間

第7章 新しいお金の考え方ーー必要な資金をどう得るか

  • 数字のつじつまを合わせる
  • お金に関する自己効力感
  • お金に関する自己主体感

第8章 新しい時間の使い方ーー自分のリ・クリエーションへ

  • 時間の使い方は社会が決める
  • 100年ライフの時間配分
  • 新しい余暇の過ごし方

第9章 未来の人間関係ーー私生活はこう変わる

  • 家庭
  • 仕事と家庭
  • 多世代が一緒に暮らす時代へ

終章ーー変革の課題

  • 自己意識
  • 教育機関の課題
  • 企業の課題
  • 政府の課題

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