次の点についてお伝えします。
・この本の気になった点を3つご紹介
私自身、ビジネス書、技術系書籍などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。
MaaS(マース:Mobility as a Service)はあまり聴き慣れない言葉かもしれません。
ただ、これからますます高齢化、地域の過疎化などが進んでしまうことがありえる日本にとっては重要なワードとなります。
早速、引用してしまいますが、MaaS Globalを創設したSampo Hietanen氏(サンポ ヒエタネン)が目標としたことは、
「あらゆるモビリティサービスを組み合わせて、クルマを所有する生活よりも、より良い生活を実現するサービスを作り出すこと」
とのことです。
この記事は1、2分で読めますので、もしよろしければ目を通していただければと思います。
目次を最後に載せております。
書評「MaaSがまるごとわかる本 楠田悦子・森口将之」【世界の事例がわかる】
著者 楠田悦子・森口将之
出版 ソーテック社
2020年5月10日 初版第一刷発行
”公で支える仕組み”が交通弱者を救う
日本では公共交通であっても民間事業者が運営することが多く、財源のほとんどを運賃収入で賄っています。そのためマイカー普及などによって利用者が減ると、赤字解消のために運賃の値上げや減便などが行われ、車両やインフラへの投資は止まり、保守点検が疎かになるという負のスパイラルに陥り、やがて廃止されてしまいます。
しかし欧州のように公で支える仕組みが確立されれば、黒字か赤字かによらず車両の更新や駅のリニューアルが可能となり、運賃は安く、本数は多いまま保たれます。利用者にとって常に魅力的な交通であり続けているので、高齢になって自動車の運転を止める状況になっても、代わりの移動はしっかり確保されています。これこそ真の公共サービスと言えるのではないでしょうか。
出典 MaaSがまるごとわかる本 P.40
いきなりMaaSの話でないところから入っていますが、この本の中にも、MaaSを進めやすいのはむしろ都心よりも地方だろうということが書かれています。実際、都心には10の鉄道事業者が入っており非常に一元化が難しいことがあります。
日本では、高齢者が事故を起こすから免許をとりあげろ、ということはすぐに取り組みますが、それをやるならUberのような個人が行うタクシーの導入を認めるようにすることなどが必要です。
ところが日本は現在のバカ高いタクシー業界を守るためにUberのタクシー事業を認めていません。
本当は、タクシー業界を守ることになっていないにも関わらずです。
このあたりは機会があれば書いていきたいとは思います。
また、病人になった高齢者には手厚く税金を使いますが、そもそも、病気にならないようにすることが大切なわけです。
病気にならないためには、高齢者が行きたいところにでかけることができるようにしたりすることも一つです。
信用乗車
さらに欧州でトラムとも呼ばれるLRTでは、「信用乗車」というシステムが普及しています。運転士などの乗務員が乗車券の確認はせず、利用者があらかじめ乗車券を買って乗車していると信用することから、こういう呼び名が生まれたそうです。ドイツやスイスでは鉄道もこの方式です。
もちろん、そのままでは不正乗車が横行してしまうので、乗車券の確認を行う係員がたまに乗車しており、無賃乗車が見つかった場合は高額の罰金を取られます。以前乗ったドイツのフランクフルとの場合は60ユーロと、最大で通常の乗車券の約20倍にも相当していました。乗車券の2倍以内という日本の罰金とは大差があります。
出典 MaaSがまるごとわかる本 P.43
MaaSの導入のために、という部分の内容になります。
LRT(Light Rail Transit)とは次世代型路面電車システムと日本では訳されています。
信用乗車というようなことが行えるのであれば、かなりMaaSを導入する敷居は下がります。
伊豆のIzukoのMaaSもそうで、東急の森田さんの書いた本がありますが、この本の中でも非常にアプリ制作に苦労したということが書かれています。
○○戦記というと、どこかのRPGの名前のようですが、この本はとても面白かったです。
なぜなら、リアルに何が起きているのか、プロジェクトチーム内での話や、地域のバス会社とのやりとりなど本当にリアルに感じることができるようなMaaSに対する取り組みが物語のように書かれているからです。そのうちどこかで紹介したいなと思います。
余談ですが、日本のように罰金が2倍以内という形であれば、見つかったら支払えばいいと思う人が多いですから不正乗車も多くなるでしょう。
実際、グリーン車や小田急のロマンスカーなどに乗ると、支払っていないんだろうなという人を見かけることがあります。
見つかっても数百円支払えばいいということであればその見つかる確率と支払った場合との損得で考えればどちらが得かわかります。
定額制パッケージが昔からあった
レベル3の定額制パッケージについてですが、もともとスイス全土やエリア内の公共交通が乗り放題になる定額制パッケージの切符の販売が以前より行われています。1年間スイス全国の公共交通が乗り放題となる年間パスポート「General Abonnement」(略して、GA)は、カードによる発行で、写真、名前などが記載されています。
スイスは日本のような改札がありません。乗車した後に、回ってくる乗務員にGAを見せて、チェックを受けます。改札がなく、定額制になっているので、運賃や時刻、経路などを心配することなく、公共交通に飛び乗ることができます。GAは、自動車の運転免許証のような感覚で、公共交通の免許証といった感覚かもしれません。
出典 MaaSがまるごとわかる本 P.101
このレベルというのは、MaaSには五段階レベルがあります。
詳しくは、英語になりますが、こちらにあります。
日本のサービスがのっていてわかりやすいので、この本の方から引用します。(P.32)
レベル0 | 統合なし 単独の交通事業者による経路検索・運賃案内 (例「東京メトロ」アプリ) |
レベル1 | マルチモーダルな経路検索・運賃案内など情報の統合 複数の交通事業者を横断した経路検索・運賃案内 (例「ジョルダン乗換案内」アプリ) |
レベル2 | 一時利用での検索から予約、決済までの統合 一時利用での検索から支払いまでの総合サービス (例「JapanTaxi」アプリ) |
レベル3 | サブスクリプションなど契約や責任を伴うサービスの統合 サブスクリプション(定額制)を含めたサービス提供 (例「Whim」アプリ) |
レベル4 | 社会的目標を国の政策レベルで統合 国の政策レベルでサービス提供 |
上の引用の続きには、次ような内容が続くので、そのまま引用します。
映画館やスキー場の予約も可能
さらにGAは進化してゆきます。GAは2015年8月15日から「Swiss Pass」へ名称やデザインが変わり、ID番号も入りました。公共交通はもちろん、自動車シェア、カーシェアリング「Swiss Mobility」などの次世代モビリティサービスに加えて、シェアリングサービス、スキー場のリフトパス、映画館などのチケットの予約や購入などができるほど、サービスが拡張されました。
出典 MaaSがまるごとわかる本 P.101
この先に書かれていることで、進んでいることがもう一つあるので、引用します。
このようにユーザーファーストかつ運用側の課題を融合させて合理的に設計された仕組みや体制を基に作られたのが、スイスの公共交通の全運行事業者が加盟する運賃同盟です。そしてその運賃同盟が作ったのが、プラットフォーム「NOVA」です。
NOVAでは、スイス全国の鉄道、トラム、バス、フェリーなどの公共交通のデータが一元化されており、その構築はSBBが担っています。
出典 MaaSがまるごとわかる本 P.103
スイスにもアプリなどのプロバイダーは複数あります。
そのプラットフォームが一元化されているということは、乗客の情報や利用実績なども一元化されているということです。
通常、日本で何かアプリを使う時には、それぞれのアプリなり、サイトなりにIDを登録してという形で別々の管理です。
このユーザーの管理の一元化ができているということは、非常に効率的にシステムを運用することができます。そもそも、アプリや、サイトごとにユーザーを管理する仕組みは本来不要なはずです。
もちろん、人口が1000万人に満たない国だからできている部分もあるでしょう。
人口が1億人いる日本こそ、システムがアプリやサイトごとに必要になるというのは非効率であることはいうまでもありません。
このような形で、もっと他の国についても、また日本においてのMaaSの取り組みが数多く紹介されています。
図が多くわかりやすい本ですので、もしよろしければ目を通していただければと思います。
目次
はじめに
MaaS巻頭用語集
- 第1章 MaaSとは何か
- 第2章 MaaSへと至るさまざまな交通改革
- 第3章 MaaSの礎となるデジタルテクノロジー
- 第4章 海外のMaaS実例
- 第5章 MaaSと自動車メーカー
- 第6章 日本版MaaSの作り方
- 第7章 日本オリジナルの観光型MaaS
- 第8章 日本ならではの地方型MaaS
- 第9章 ラストマイルMaaSをどうするか