ピーター・ディアマンディス 書評

書評「2030年すべてが『加速』する世界に備えよ」【10年後の未来をリアルに感じる】

次の点についてお伝えします。

・この本の気になった点を3つご紹介

私自身、ビジネス書などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。

とても面白く、参考になりました。
10年後の未来がどうなっていくのか、久しぶりいい本に出合うことができました。
400ページ以上の分厚い本なので、買う前は大丈夫かなと不安になりましたが、面白くあっという間に読み切ってしまいました。

5GやVR、AR、EV、ドローンなどがはもちろんのこと、様々な分野でどのように技術が発展していき、私たちの生活がどうなるのか。
ここまでたくさんの例を挙げてわかりやすくした本はなかなかありません。
また、一つ一つの記事が相当詳しく調査したうえで文章が書かれています。

この記事は1、2分で読めますので、もしよろしければ目を通していただければと思います。
目次を最後に載せております。

書評「2030年すべてが『加速』する世界に備えよ」【10年後の未来をリアルに感じる】

2030年

著者 ピーター・ディアマンディス&スティーブン・コトラー
出版 (株)ニューズピックス
訳者 土方奈美
2021年2月5日 第3刷発行

空飛ぶ車はもうすぐ

「ウーバーの目標は、2020年には空飛ぶ車の性能を世に知らしめ、2023年にはダラスとロサンゼルスで空のライドシェアを完全に事業化することです」と壇上のホールデンは説明した。そしてさらにこう付け加えた。
「最終的にわれわれは、車を保有し、使用することを経済的に見合わない行為にしたいと考えています」

出典 2030年すべてが「加速」する世界に備えよ P.25

要は、今の車を所有しながら移動するコストよりも、ウーバーの提供する車に乗って移動する方が安く済むようにするということです。
ウーバーのすごいところは、この本の中にも書かれていますが、どういう空飛ぶ車を開発するのか、かなり詳しく書いてあります。
それだけでなく、その管制や、離着陸に使う「メガ・スカイポート」についても詳しく仕様がすでに決まっています。

近年、ドローンで人が乗っているものも映像などで見ることができます。
有人ドローンの映像を見ていると、危なっかしくてとても見ていられない、というようなイメージを持っていました。

あれの大型なものを作って飛ぶことなんてあるのだろうかと。

しかし、どうも飛行機のような大型なものを作るというよりも、車サイズのもので設計は進むようです。
恐らく、重さとの関係などから決まってきているのだと思われます。
(もしかするとリスク分散……)

また、飛行距離も車くらいで、時速240キロで3時間連続飛行、パイロット一人と乗客4人ということです。
意外なのは、パイロットを必要とするというところです。
当面はというところかもしれません。

恐らく地上を走るよりも、あるきまったルートを飛行するのであれば、地上の運転よりも安全な気はします。

ただ……個人的に観覧車やロープウエーですら、怖いと思うと思うくらいですので、どうなんでしょう。
飛行機は大きいから安心して乗っていられるのですが、これも慣れなのかもしれません。

あくまで10年先くらいの話ですが、恐らく移動する選択肢が増えるという形になるのだとみています。
現在はヘリコプターで移動できる人というのは相当なお金持ちだけですが、そういった形での移動がドローンに代わるように思います。

そのため、飛行機は飛行機で必要でしょう。

3Dプリンターで何でも作れる

最初の3Dプリンターが登場したのは1980年代だ。見た目が悪く、スピードは遅く、プログラミングは難しく、壊れやすく、プラスチックしか印刷できなかった。
今日の3Dプリンターは元素周期表をほぼ制覇している。
今では金属、ゴム、プラスチック、ガラス、コンクリート、さらには細胞、皮革、チョコレートなどの有機材料まで、数百種類の材料をフルカラーで印刷できる。しかもプリントアウトできるものも高度になっている。ジェットエンジンからマンション、回路基板や義肢まで、3Dプリンターはますます短い時間で、ますます複雑な装置を生み出すようになった。

出典 2030年すべてが「加速」する世界に備えよ P.92

そこまで進んでいるとは思っていませんでした。
Youtubeなどで紹介されている個人が買っている3Dプリンターは、まさにその1980年代のものレベルでとても使い物にならないものばかりでした。

3Dプリンターはプラスチックとばかり思っていたのも間違いで、いまやどんな物質でも選べるくらいになっているとは自分の情報不足を知らされました。
確かに少し調べてみるとずいぶんと業務用については種類も多いようです。
ケーキをいろいろな形で作ることができるなんてのもありました。

ただ、ロット(作る数)によるのだとは思います。
従来は金属の型を作って、そこに流し込んで成型することが主体でした。
大量生産が必要なものであれば、今まで通り金型を作るのでしょうし、小ロットのものや、急に必要なものの場合は、3Dプリンターを使うという形なのだろうと考えています。

自動車保険は終わる

保険で重要なのは平均値だ。保険業の基本的なビジネスモデルは、リスクを評価して保険料を設定すること、つまりこれだけのリスクをカバーするにはこれだけの費用がかかる、というのを見きわめることだ。十分な数の顧客が集まり、十分な時間が経てば、費用は平均的なところに落ち着き、引き受け手は利益を得られる。(中略)
だが今後10年で自動運転車が道路を走るようになり、こうした計算の前提がすべて変わったら?

現在自動車保険を支えているのは、人的ミスだ。人間は注意散漫になったり、感情的になったり、ときには不合理な行動をとったりする。年間120万人の交通事故死の原因の90%は人的ミスだ。だが人間が運転席に座らなくなれば、リスクの90%は消える。リスク評価を事業の基盤としている保険業にとって、これだけでもとほうもない変化だ。

出典 2030年すべてが「加速」する世界に備えよ P.272

この先に書かれているのですが、会計事務所のKPMGが自動車保険市場は2040年まえに60%縮小すると算出しているそうです。
自動運転になれば、当然ですね。

もちろん、本文にもありますが、だからといって、事故がゼロにはならないでしょうと。なぜなら、機械である以上故障や誤動作は人間に比べれば極端に低いけど、あるはあるでしょうから。

ただ、その場合でも自動運転なのだから、乗客の責任にはならないはずだと。
自動車メーカーなのか、部品メーカーなのかはわかりませんがと。

自動運転は、電気自動車と並んで注目を浴びていますが、自動車保険という業界そのものを壊すことになりえるということです。

このような形で多くのすぐ来る未来の例と、その例えば保険が生まれるまでの歴史なども書かれています。

ここでは、3つしか紹介しませんでしたが、他にも医療や、ハイパーループ(真空の中を進む鉄道)、食料、教育といった様々な分野についての変化について書かれています。

ここまで詳しく調べるのはいったいどれだけたくさんの人がかかわったのだろうと思うくらいよくまとまった本です。

全ての業界の人にとって参考になる書籍です。
アメリカの人が書いたものですので、視点も私たち日本人と異なるからこそ読んでいただければと思います。

目次

はじめに

第1部 「コンバージェンス」の破壊力

  •  第1章 「コンバージェンス」の時代がやってくる
  •  第2章 エクスポネンシャル・テクノロジー Part1
  •  第3章 エクスポネンシャル・テクノロジー Part2
  •  第4章 加速が「加速」する

第2部 すべてが生まれ変わる

  •  第5章 買い物の未来
  •  第6章 広告の未来
  •  第7章 エンターテイメントの未来
  •  第8章 教育の未来
  •  第9章 医療の未来
  •  第10章 寿命延長の未来
  •  第11章 保険・金融・不動産の未来
  •  第12章 食料の未来

第3部 加速する未来

  •  第13章 脅威と解決策
  •  第14章 五つの大移動がはじまる

おわりに

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