5G 書評 飯盛英二

書評「図解まるわかり5Gのしくみ」【5Gの具体的な動作や課題もわかる】

次の点についてお伝えします。

・この本の気になった点を3つご紹介

私自身、ビジネス書などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。

5Gについてはサービスが始まったこともあり、耳にすることも増えてきました。
そのサービスはもちろんですが、どのような仕組みの上で成り立っているのかについて書かれています。
著者は、富士通の人たちで図解も多く、とてもわかりやすく説明されています。

この記事は1、2分で読めますので、もしよろしければ目を通していただければと思います。
目次を最後に載せております。

書評「図解まるわかり5Gのしくみ」【5Gの具体的な動作や課題もわかる】

5Gのしくみ

著者 飯盛英二/田原幹雄/中村隆治
出版 翔泳社
2020年11月5日 初版第一刷発行

4Gと5Gの2階建て

制御信号を取り扱う機能の層をCプレーンと呼び、利用者ユーザー信号を扱う層をUプレーンと呼んで区別しています。(P.90)

5Gの基地局は高い周波数帯の広い帯域を使ってUプレーンのユーザー信号を高速で伝送しますが、高い周波数帯の電波は到達距離が短く、1つの基地局のカバーエリアは小さくなります。

4Gの基地局は5G用の周波数帯より低い比較的遠くまで届く電波を利用しているため、1つの基地局がカバーするエリアは大きくなります。4Gの基地局で、複数の5Gの基地局のエリアで通信する携帯電話機のCプレーン制御信号をまとめて扱うことで、5GのUプレーンの高速伝送サービスを安定・効率的に提供することができます。(P.96)

出典 5Gのしくみ

私たちが普段使っている(2021/2現在)スマホは4Gと呼ばれるものです。(すでに5Gの人もいるかもしれませんが)
iphoneが出たばかりの頃の3Gのときには、通信速度も遅く、イマイチ感がありました。

ところがいつのまにか、4Gになっていてサクサク使える時代になっていた感覚です。
アーティストのELTがソフトバンクのLTEのCMに出ていたのは懐かしい話です。
リンクの記事によると2012年10月のようですね。

この本の先に載っているのですが、このように制御信号を分けることを、NSA(Non-Stand Alone)構成といい、5Gの基地局を5G用として独立させることをSA(Stand Alone)構成といいます。

キャリア業者としても経済的にも広げやすいということがあります。
人が多く集まる場所では、SAの5Gが使われていくと思われます。

補足:3G、4G、5Gって何?EXILEの仲間ではありません

少し補足しますと、3G、4G、5Gというのは、それぞれ、3世代、4世代、5世代という意味です。
GはGenerationのGですね。EXILEの仲間の方(GENERATIONS)ではありません。

この4Gについては、Windowsでいうと、XPや7のような割とよくできているように感じます。
そのため、5Gに移行していく際にも使われるというのはとてもいい方法に思います。

補足:5Gになると困ること

私自身が大学院ではアンテナの研究室にいたので少し補足します。
5Gは速い速いといいますが、速いということは高い周波数を使っているということです。
高い周波数ということは伝搬する際の減衰量が大きいです。

減衰量(電波が弱くなる量)は、

・距離の2乗に比例
・周波数の2乗に比例

します。

減衰量が大きくなるということは、遠くまで電波が飛ばないということです。

わかりやすい例で言うと、車などでAMラジオって結構、山奥でも入りますよね。
FMラジオは音はAMラジオに比べるといいですけど、山奥に入るとすぐに入らなくなりますね。

変調方式(電波を送る方法)がAM(Amplitude Modulation)、FM(Frequency Modulation)という通り異なるので音質の良し悪しは出るのですが、それ以外にも電波の伝搬についてもAMラジオは使っている周波数が1000kHz(1MHz)とかですが、FMラジオは80MHzじゃないですか。
そういうところもあるので電波が届きにくいんです。

他にも電波は回折(回り込む)という特徴があります。
光も電波の親戚ですが、周波数が高くなればなるほど回折しにくくなり、光に近い特性になっていきます。
つまり、直進性が強くなるということです。

そういうこともあるので、制御信号は4Gを使いながらユーザー用には5Gも使うということなのでしょう。
もっとも、基地局が増えるということは、ユーザーのいる場所の精度が高くなるとも言えます。
ますますビッグデータの精度もあがります。
犯罪などでも犯人が捕まりやすくなるのかもしれません。

5Gスマホは重くなってしまうのか

5Gスマートフォンの電池持ちは4Gよりやや短くなる傾向があり、電池容量がこれまでより大きくなっています。
スマートフォンの内部状態は大きく①待ち受け中と②通信中の2つに分類され、通信パケットの有無に依存して遷移が決まります。
NSA方式では、5G端末でも待ち受け中は4G信号を受信して動作するため電流の消費は4G端末と同じです。(中略)
散発的に少量パケットが発生するブラウジングやLINEのような動作は、通信とパケット待機状態を繰り返すため、消費電力が4Gより増加します。

一方大容量ファイルのアップロードやダウンロード処理では、高速でパケット送受信して無線部を効率よく使用して、通信するパケットがなくなれば4Gより早く待ち受け中に戻るため電流を削減できます。

出典 5Gのしくみ P.124

この部分については、この先に対策も書かれていたのですが、解消されることと考えます。
スマホ自体に求められるスペックも高くなりますので、当然その部分でも従来のスマホよりも消費電力は大きくなるでしょう。

使い勝手の関係から将来もスマホの大きさはあまり変わらないと思いますが、重さは明らかに軽くなるはずです。この重さはあきらかに重すぎます。
EV(電気自動車)などでも日産リーフの場合は車重の二割を占めるそうですが間違いなくこれから軽量化が進むはずです。
バッテリーが軽くならないと、ドローンの応用のような空飛ぶ車も開発が難しいはずです。

ローカル5G

ローカル5Gの通信技術は、全国で携帯電話事業者が展開する5Gと基本的に同一です。設置や運用を行う主体は地域の自治体や企業、団体などさまざまで、ローカル5Gを導入する動機も様態も地域課題の解決や企業の生産性向上、ビジネス業務の改革など多岐にわたると考えられますが、導入事例は第7章で紹介したものも重なります。(中略)

ローカル5Gは、無線局免許を取得して設置・運用する必要があります。

出典 5Gのしくみ P.170

このローカル○○というと、FM放送局などがありますね。
その地域だけで聞くことのできるラジオです。ただ、最近はその手のものもインターネットラジオで聞くことができるようになりました。

このローカル5Gが想定されるということは、おそらく今の携帯電話のように日本のすみずみまで、誰もいないようなエリアでも使えるようにはならないということがあらかじめわかっているから、それと電波の特性として基地局からの近距離でしか使えないということがあるからと予想します。

5Gは使う周波数帯は、3.7GHz、4.5GHz、28GHzと種類があります。
ローカル5Gは28GHzではじまるようです。
その際に使用する4Gは2.5GHzで制御信号のCプレーンを広く使うという形です。

日経クロステックで調べたところ、
2021年1月25日現在のローカル5Gの申し込みは、43の企業や自治体があるそうです。
周波数帯も、28GHz以外にも、4.5GHzも使われているようです。

この本にもいくつか例が載っているのですが、建設現場や、工場、農業、防災現場など、いわゆる普段から人が多くいるとは限らない場所で一時的にローカル5Gを設置しようというものです。

日本の道によっては、人が滅多に通らない道などもあるはずです。
一つの基地局がカバーする距離はせいぜい数百メートル〜1km程度なわけですからそんなところに5Gを設置することは現実的ではありません。

このような形で5Gについて技術的な側面から解説されています。
技術的な本というとなかなか難しくて理解できない、ということもありますが、この本はそういうこともなくわかりやすいです。
技術者が書いているからこそ、書くことができている内容がありますので、もしよろしければ手にとっていただければと思います。

目次

第1章 5Gって何?〜移動通信技術の発展と5Gの位置付け、その役割〜

第2章 5Gは電波で通信する〜貴重な電波資源を大切に効率よく利用するしくみ〜

第3章 5Gは電波の達人〜よりよく電波を利用するための5Gの工夫〜

第4章 5Gのネットワーク〜5Gの性能を最大限に引き出すコア網の仕掛け〜

第5章 5Gスマートフォンの特徴〜5G商用サービスで使用されている最新技術〜

第6章 5Gスマートフォンの動作のしくみ〜IoT機器を含むスマートフォンとネットワークの関係〜

第7章 5Gがもたらすもの〜超高速、高信頼・超低遅延、多数同時接続を活かした新たなビジネスの事例〜

第8章 ローカル5Gと5Gの発展の先にあるもの〜守備範囲を広げる5G〜

用語集

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