山崎養世 書評

書評「21世紀型大恐慌 山崎養世【日本が勝ち残るための施策案を知ることができる】

次の点についてお伝えします。

・この本の気になった点を3つご紹介

私自身、ビジネス書、技術系書籍などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。

山崎さんのことは、Interop東京2021の4月の講演で知りました。
その講演と、この本の内容は割と重なることが多いです。講演は、ある意味、感動した部分もあります。
太陽光発電を普及させることでエネルギー問題を解決していくことなどのお話をされていました。
また、高速道路の料金について、それから電気で走る自動運転車がどういう効果を生むかなどについてです。

この記事は2、3分で読めますので、もしよろしければ目を通していただければと思います。
目次を最後に載せております。

書評「21世紀型大恐慌 山崎養世【日本が勝ち残るための施策案を知ることができる】

21世紀型大恐慌

著者 山崎養世
出版 PHP研究所
2020年11月24日 第1版第1刷発行

格差社会が借金漬けに

格差社会においては、少数の富裕層だけがお金を貯め込んでいます。この人たちは生活必需品や、欲しいと思うものはすでにその多くを所持しているので、収入がさらに増えたとしても、同じ額だけ消費を増やしません。増えた分の収入は投資や貯蓄に回り、資産は増える一方ということになります。
他方、9割の人たちは、ネットで見たときに貯蓄が基本的にありません。収入でまかなえない支出は、ローンなどを組んで将来的に分割して支払うのが当たり前になっています。とは言っても、過大な借金をするのは自己破産につながり怖いので、最低限の借金にとどめるのが一般的、だから消費をできるだけ切り詰めます。
富裕層の消費が増えず、非富裕層の消費も拡大しないのですから、経済が成長するはずがありません。格差社会が経済成長を阻害するのは、こうした理由からです。(中略)
非富裕層向けのローン商品が多種多様にあります。これにより、9割の人たちは借金漬けになっているのです。

出典 21世紀型大恐慌 P.044

アメリカの話として書かれているのですが、これは日本でも同じことが言えます。
リボ払いなどといわれるものは、返す能力が少なく、先を見通せない人から搾取する仕組みです。

リボ払いを使った場合はポイントをつけます、のようにあたかも得をさせるように思わせます。
しかし、お金をいくら、何につかったのかをわからなくさせ、消費させ続けるための方法です。

最近では、車は、「残価設定ローン」というものが流行っています。
残価設定というのは、3年後や5年後の買い取り金額を、購入時の金額から引き、その引いた部分に対してローンを組みます。
そのため、実際にはお金が足りなくても車に乗ることができるようになっています。

ただ、そのローン後は、再度ローンを組むか、一括で支払うかなどの方法が求められます。
一見、安く済んでいるようですが、決して安くはありません。

安く済んでいるように思わせるところにワナがあります。

送電網が平和な世界を作る

国を超えて電力を融通し合う送電網があれば、それを壊してしまう戦争は非合理的になりますし、戦争を起こした国への電力の送電を周辺国がストップすれば、その国の国民はたちまち生活ができなくなってしまうでしょう。第二次世界大戦までは、石炭や石油をめぐっての戦争を繰り返してきたヨーロッパが、EUの成長と並行して送電網で1つになり、ヨーロッパに75年にわたる平和をもたらしたのが、まぎれもない実例です。(中略)
現在はヨーロッパだけですが、インターネットのように全世界が送電網のネットワークでつながれば、世界中で電力を分散発電し、相互に融通し合うことができるようになります。こうして超安価な電力がいつでもどこでも活用できることで、水や食糧なども誰もが安価に入手でき、人類が欠乏から解放される。今は夢のような世界が実現するはずです。

出典 21世紀型大恐慌 P.097

電力ネットワークが平和な社会を作るという考え方はとても興味深いです
山崎さんは講演の中でも話されていましたが、日本も周辺国と電力ネットワークを組むことで平和な社会を作ることができることになります。

石油や石炭で戦争が起きていたのに、電気が世界を平和にするようなことができればそれは理想です。

太陽光は世界のどこかには常に照らしているわけですから、それらをネットワークでつなぐことができれば、エネルギーで困ることはなくなります。

国をまたいだ画像処理医療ネットワークが病気を防ぐ

日本の医療機関におけるMRI(磁気共鳴画像)とCT(コンピュータ断層撮影法)の普及率はOECD(経済効力開発機構)加盟国平均の約10倍で、ダントツの1位です。
しかし、MRIとCTを活用して、がんを早期に発見できているかと言うと、発見できたときには、すでにがんのステージが進行しており、手遅れということが多々あります。
ステージが進行する前の早期発見が求められているわけですが、一般の医療機関に勤める医師がMRIやCTで撮影した画像を見ても、なかなか早期のがんを発見できないのが、残念ながら現実です。
この問題を解消するために開発が進むのが、がんのAI診断です。AIであれば、非常に多数の過去のがんのデータ画像と照らし合わせることができます。そこで、人の目では判別できない小さながんや、がんの兆候であっても、見つけることができるのです。(中略)
医療ネットワークができれば、地方に行くと医療の質が下がるという現状を大きく変えることができ、地方のハンディがなくなります。田園からの産業革命を起こすためには、欠かせないネットワークです。
ただ、日本だけではデータ数が少ないので、中国などと協力してデータ数を増やすことが必要不可欠です。政治対立を超えて、日本や中国、台湾、シンガポールなどとアジア医療コンソーシアムをつくることが、今後求められてくるでしょう。

出典 21世紀型大恐慌 P.185

医療現場においても、画像がデジタル化されることで多くの事例を集めて医療判断が行えるようになるということです。
今までは医療というのは長年のカンでしかできなかった部分が多かったです。
それが、AIなどの判断が入ることで地方での医療レベルを上げることができるようになるということが一つの医療ネットワークです。

ところが、ここで言われていることは、地方だけでなく、国外においても画像を共有することでより精度の高い情報にすることができます。

先に電力ネットワークが世の中を平和をもたらすと書きましたが、医療ネットワークもまた、国をまたいで組まれることで人々の健康が守られるようになります。

このような形で世の中がさまざまな形でネットワーク化されることで、よりよい世の中が作られるということの提言がされています。

それほど複雑な話を交えず、どうやって世の中をよくすれば良いのかについて書かれています。
もしよろしければ、目を通していただければと思います。

目次

はじめに

1章 アメリカ発「21世紀型大恐慌」が起きる

1 「21世紀型大恐慌」への経路

2 アメリカはどこで道を間違えたのか?

3 アメリカは「21世紀型大恐慌」後どうすべきか?

2章 アメリカ型・石油経済の限界、太陽経済の勃興

1 電力がどこでも安く手に入る分散型社会へ

2 「自電車」が革命を起こす低炭素な未来

3章 日本発・田園からの産業革命

1 田園からの産業革命とは何か

2 令和の「国土の均衡ある発展」へ

3 日本の田園を輝かせるプロジェクト

終章 「21世紀型大恐慌」を突破する新・金融革命

1 世界一の債権国の資金をいかせ

2 令和の「新・日本株式会社」へ

謝辞

-山崎養世, 書評

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