書評 百田尚樹

書評「百田尚樹の新・相対性理論」【今を生きろ】

次の点についてお伝えします。

・この本の気になった点を3つご紹介

私自身、ビジネス書などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。

百田さんは「永遠の0」や、「海賊と呼ばれた男」などが有名ですね。
この本を読んで知ったのですが、50歳になってからデビューされたそうです。

人類が時間を短縮するためにどれだけ知恵を絞ってきたかということや、それにより使える時間を増やしてきたことなど書かれています。
ただ、言えることは、今を生きろということを言われているように感じました。

この記事は1、2分で読めますので、もしよろしければ目を通していただければと思います。
目次を最後に載せております。

書評「百田尚樹の新・相対性理論」【今を生きろ】

百田尚樹

著者 百田尚樹
出版 新潮社
発行 2021年1月25日

記憶は置き換わる

社史では辛い仕事と書かれていたタンク底の作業は、実際にやった者にとっては、楽しいものだったのです。しかしその作業の間、「辛い」「早く終わりたい」ということだけしか考えていなければ、楽しい思い出としては残らなかったでしょう。
ただ、彼の中で「楽しい時間」になったのは、別の理由があったのえはないかと私は考えています。タンク底の仕事をやり終えた出光興産の頑張りのお陰で、日本に石油が輸出されることになりました。つまりその仕事は日本のためになったのです。この達成感と評価によって、タンク底の過去の時間が書き換えられた可能性があるのではないでしょうか。

出典 新・相対性理論 P.53

この視点はとても面白いです。
普通に考えると、その時やっていたことが楽しかったか、きつかったかは後になってもあまり変わらない感じがします。
ただ、学生時代の部活動などでも毎日本当に大変だったはずなのに、後になってみると楽しい思い出になっているということはよく聞きます。
それは、きつい毎日の中のほんの一部の楽しかったことだけを覚えているからなのかもしれません。

私の場合は残念ながら、大変だったことは大変だった思い出にしかならないタイプのようで、そういう逆になっていることは思いつきません。

才能と努力

人間というものは、筋肉を使うと疲労しますが、実は脳も精神も同様で、使いすぎると疲労します。そうなると効率も落ちます。これは「時間」が私たちに与える負荷です。
ところが中には、いくら筋肉や精神を使っても、たいして疲労せず、また効率も落ちない人がいます。また以上に回復が早い人もいます。そういう人は普通の人以上に努力することが可能です。これは「時間に打ち克つ人」とも言えます。私たちの社会では、当然ながらそういう人も評価されます。
つまり「才能ある人」というのは時間を短縮することに優れた人であり、「努力する人」というのは時間を投入することに優れた人と言えます。

出典 新・相対性理論 P.85

この分類はとても興味深いです。
確かに、プログラムの世界などでも明らかに才能があると感じさせる人は、芸術的なコードなどにこだわっていたりしますが、とにかくコードを組み上げるのが早いです。
普通の人の数倍は当たり前です。
もちろん、必要なモジュールはすでに準備してあるということもありますが、あきらかにコードを組むことが恐ろしいほど早いのです。
そういう人は短い時間で物事を成すことができますので才能がある人です。

逆にそうでない人だとしても、いわゆる努力でカバーする人もいます。努力だけは誰にでもできることだと思っていましたが、それも一つの才能だということを指摘しています。
それは才能がない人間の唯一の手段であり、誰でもできることだと思っていたのですが、そうではないということですね。私にとっては発見でした。

時間を買わされている

ここで話を「娯楽」に移します。前に私は、人間は「自分の時間」を売って金を得て、その金で「他人の時間」を買っていると書きました。それが「娯楽」です。「娯楽」の多くは「他人の時間」を購入したものです。観劇、スポーツ観戦、コンサート鑑賞といったマスのものから、マッサージや個人レッスンや風俗サービスといったマンツーマンのものまで、世の中には「時間」を売っている商売が数多くあります。
ところが、私たちはそれらを自分の意思で買っているように思いながら、「退屈」を恐れるゆえに、本当は「買わされて」いるということはないのでしょうか。

出典 新・相対性理論 P.150

今、スマホのゲームや任天堂スイッチなどがバカ売れしているのは、退屈を恐れている人が多いという部分はあります。
ひと昔前は、電車の中の人たちは多くが寝ていました。ほんの10年前くらいの話です。
今では、みんながスマホを見ています。

この百田さんの本にも書かれているのですが、日本人は働きすぎだと言われながらも、昔に比べると働く時間は大幅に減っているそうです。

つまり、暇な時間が増えたということです。
かつて、任天堂の社長が花札などのカードの製造だけでなく、ゲーム機の開発を進めるときに考えたことは、これからの人は暇な時間が増えるということがありました。
その余暇の時間を埋めるために開発したと聞いたことがあります。

この本の一番最後の方に書かれているのは、寿命は案外短い、みんな悔いのない人生を送っていえると言えますか、ということに思います。

なんとなく生きていると、本当になんとなく終わります。
もちろん、それが悪いことでは全くないですが、それはその人次第です。

どういう人生を送りたいと思っているのか、今、ここで寿命がつきることになったとしても悔いがないですかということです。

時間についての本ではありますが、ある意味生き方についての本です。
もしよろしければ手に取って読んでいただければと思います。

目次

はじめに

第1章 すべては「時間」が基準

  • 物理的な時間を長く生きても「長生き」にはならない
  • すべての道具は「長生き」のために作られた
  • 人類の発明品はすべて「楽しい時間を生み出す」ために作られた
  • 「時間の長さ」は心で決まる
  • なぜ年齢で「時間」の流れの速さが変わるのか
  • 楽しい時間が早く過ぎるのはなぜか?
  • 「苦しい時間」が「楽しい時間」に変化する不思議

第2章 現代社会と「時間」

  • 人間社会は「時間」の売買で成り立っている
  • 金を盗むのは「時間」を盗むのと同じである
  • 殺人は「時間」を奪う究極の犯罪
  • 「才能」とは、同じことを他人よりも短い時間でやれる能力である
  • 人類が戦い続けてきたのは「早さ」と「重さ」である

第3章 時間はあらゆるものに交換可能

  • 社会は「時間の交換」によって成り立っている
  • 使わない金は石ころと同じである
  • 私たちが所有しているすべての品物は「時間」を換えたものである
  • 言葉は人類が「時間」を超えるために作られた
  • 人類が「時間」の壁の前に敗れる時
  • 「時間」は失った時に初めてその大切さを知る

第4章 私たちの「時間」を奪うもの

  • 現代人が最も恐れるのは「退屈」である
  • 娯楽の多くは退屈を恐れるために作られた
  • 「時間」を買わされている現代人
  • 「時間」はあらゆることに交換可能だが、それを再び「時間」に戻すことはできない
  • 世界の富をすべて使っても「二十歳の一日」を取り戻すことはできない
  • 自殺は究極の「時間の投げ捨て」

第5章 「止まれ、お前は美しい!」

  • 恋愛の喜びは「時間の共有」にある
  • 「慣れ」の恐ろしさ
  • 古代人が壁画で本当に描きたかったものは何か?
  • 芸術のみが「エネルギー保存の法則」を超える
  • 成功を望むなら「今やるべき」ことを今やる

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