折口雅博 書評

書評「アイアンハート 折口雅博」【事業の当て方、アメリカの教育文化も学べる】

次の点についてお伝えします。

・この本の要点

私自身、ビジネス書などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。

折口雅博さんといえば、ジュリアナ東京やベルファーレを作り出し、グッドウイルやコムスンを拡大した人です。
12年で7700億円企業を作ったと本の表紙にも書かれています。

私は15年位前に出た本「プロ経営者の条件」も当時読んでいます。
折口さんの気概は変わっていないけど、立ち位置、役割を変えたのだなと感じました。
今は日本の起業家のコーチングをされています。

15年前の本と変わった点は、「人」にフォーカスして書かれている点です。
組織を作るためには「人」が動かないとなりません。
その方法についても書かれています。

また、アメリカでの子育て(9歳から大学まで)についてもサッカーを中心に詳細に書かれています。
教育環境など含めて、日本とどのように異なるのかを知ることができます。
全部で約500ページのうちの1/3くらい使っていますのでかなり具体的です。
この本自体のページ数は多いですが読みやすいです。

3つだけ要点を選んでお伝えします。
3,4分で読める記事ですので、もしよろしければ目を通していただければと思います。

書評「アイアンハート 折口雅博」【事業の当て方、アメリカの教育文化も学べる】

アイアンハート・プロ経営者の条件

(左は参考までに2005年出版の「プロ経営者の条件」

著者 折口雅博
出版 昭文社

この本の要点

  • センターピン理論
  • 自分の夢や、やりたいことを志にする
  • アメリカの教育文化の中で、父親として

センターピン理論

前著にも載っていることなのですが、「センターピン理論」ということを繰り返し言われています。

意味は、ボーリングでピンを全部倒すためには、センターピンに必ず当たらないとダメだというところからきているそうです。
つまり、そのビジネスを成功させるための要諦とでもいえば良いでしょうか。
どんな事業にも外してはいけない本質があると書かれています。

いくつか例が載っています。

ディスコ(≒クラブ)は「常に満員であること」
宿泊施設は「清潔さ」
人材サービス事業は、長期的には「派遣される人材の質」だが、短期的には「手配のスピーディさ」
レストランは「料理がおいしいこと」
進学塾は「成績や偏差値がアップする」

まずは、自分が行っている事業でのセンターピンをみつけなければならない。では、どうすれば良いのか次のように言われています。

その答えの一つは、常に「顧客目線で考える」ことにある。つまり自分が顧客の立場なら、商品やサービスを選ぶときに何を最重要視するか。

どんな商品にならお金を出そうと思うか。逆に「こうだったら買わない、使わない」と思うNGポイントは何か。それを考えるということだ。

そして、センターピンを見極めるために重要なアプローチがもう一つある。それは「顧客目線」と同時に、その正反対の視点である「経営者目線」も持つことだ。

つまり、自分が顧客として商品を買ったりサービスを提供したりしたとき、今度は「自分がその店の経営者になったつもり」で物事を見るという意識である。

出典 アイアンハート

そのためには、普段の経験をただ、楽しかった、つまらなかった、で終わらせてはならないと書かれています。
どうして、「楽しかった」のか。どうして「つまらなかった」のか。
これを意識することによってデータを蓄積していくことができ、物事の判断の精度を上げることができると言われています。
その結果、3年も続ければ「ものの見方」にも変化がおき、物事の本質が見えるようになると。

自分の夢や、やりたいことを志にする

本当は誰しも「やりたいこと」「なりたいもの」があるはずなのに、なぜか多くの人が、世間が評価する”良い大学”を出て、みんなが「すごい」と思う”良い会社”に入って、周囲が「良いな」と思う”安定した暮らし”を手にして-と人生の到達点や着地点をそこに求めることを致し方なしと考えてしまう。

もちろんそれも人生の一つの選択肢であり、尊重すべき生き方だ。

だが私は、これから日本を、世界を背負う日本の人たちには、自分自身の”軸”にある「本当にやりたいこと」「成し遂げたいこと」から目を背けないで欲しいと思う。

日本社会の(他者の)価値観に生き方を委ねるのではなく、自分自身の価値観にしっかり向き合うこと。他人の軸ではなく自分の軸で生きることをまっとうして欲しい。

出典 アイアンハート

折口さんは、かつて日本でのビジネスの舞台から降ろされてしまいました。
それでも志を絶対に手放さない、あきらめないと言われています。それで、この本のタイトルも「アイアンハート」になっています。
また、ハートという言葉を使っているのは、温かい心を持ったうえで、ということをこめているとのことです。
子どもの時から「みんなの役に立つ、でっかいことがしたい」と思っていたそうです。

決してあきらめないというのは私たちにも必要な心構えです。
もちろん、折口さんは巨大なビジネスを作ったからこそ目立ちますが、私たちが普通に暮らしていても、多かれ少なかれ壁にぶつかります。
そうしたとき、自分の軸だけは持ち、歩み続けることがどれだけ大切なのか、ということは学ばなければならないことです。

アメリカの教育文化の中で、父親として

折口さんの次男が9歳からの11年間に渡ってのアメリカでの生活が書かれています。
150ページにわたって詳細に書かれていますので、記録をとられていたのだと思います。
サッカーのIDキャンプについてなど情報がとても多いので、気になった個所をかいつまんでご紹介します。

政治的・経済的に困難な国や地域から移ってきて、大成功するという「アメリカンドリーム」は、現実に多々起きていることである。さらに言えば、困難を経験した人、不遇だった過去を乗り越えた人のほうが評価される。また、そのような経験のない人は魅力が無いと思われるような社会風潮すらあって、それがアメリカの成功に影響していると思う。

出典 アイアンハート

アメリカの小学生はさして勉強をするわけではないですが、高校からは壮絶な日々と言われています。
その壮絶さも書いてあります。

なぜアメリカが強いのか、については、ビッグピクチャー(全体像)を重んじて、あらゆる角度で考える点、失敗に対する寛容な文化があると書かれています。

また、英語という語学についてもコラムで述べられています。

意外に知られていない印象があるのだが、英語という言語の奥は深い(中略)

アカデミックな領域や、ビジネス上の社交や交渉で達者になろうとしたら、深く遠い道のりがあるのも英語である。(中略)

実際、シェイクスピアなどの古典文学などで使われている英国の古い言葉や言い回しを学べば、微妙なニュアンスも含めて、いくら学んでも足りないだけの量がある。英語には敬語が無いと言う人もいるが、数多くの敬語または丁寧な言い方の表現が存在する。(中略)

聞きなれていることもあり入りやすい英語、それだけに油断は禁物だ。その語彙数ゆえ、習得するには大きな壁がある。乗り越えようとしたら大変な努力をしなければならないのである。

出典 アイアンハート

日本語は難しく、英語は簡便な言語という一般論は間違っていないと言われています。ただ、英語には奥行きがあるそうです。
辞書の単語数などは英語は約40万語、日本語・ロシア語・スペイン語はそれぞれ約20万語、フランス語は約15万語あると書かれています。

折口さんは、長男の教育のときには仕事の関係でできなかったことがうしろめたさがあったそうです。そのため、次男のときに小学1年生から2年近く毎日行ったこととして「交換日記」がありました。
身に着けてもらいたかったこととして「文章を書くこと」があると言われています。

小さい頃、自由にのびのび書けば書くほど好きになる。そして書く量も増えていく。やがて言葉を多く自分のものにして、表現が得意になっていく。(中略)

次男の文章に誤字脱字があったり"てにをは"を間違えたりしていても決して指摘しなかった。それでいいのだ。自分が思う通りに自由に主張しまくる。どんどん書くことが面白くなり、好きになって、うまくなる。(中略)

渡米したあとも、彼はかなり早い段階で英語が書けるようになり、"書くことが得意"という潜在意識のもと、どんどん伸びていった。(中略)

その後も次男は、英語のライティングと小論文は得意中の得意の分野となっていった。

出典 アイアンハート

アメリカでは、文章を書いたり、自分で表現したりということを小さいときから行うと書かれていました。
本を読んだりというインプットも日本の何倍も行うけども、アウトプットについても練習するそうです。

「アイアンハート」を読んだ感想

何気なく、本屋さんで見つけました。
「あれ?折口さん、本出したんだ。少し前にTVにも出ていたし、活躍しているんだろうな。」

本の内容は、「人にフォーカスしている」という点が15年前の本とだいぶ変わっていたように思います。
前作「プロ経営者」の条件の時には、人がある意味でてこない本でした。
人について述べられていなかったのです。あくまで、人といっても「大衆」「お客様」というような感じです。

ところが、今回の本は名前を出せないところは伏せたりしていても、一人ひとりを見ている、そのように思いました。
前作を読んだとき一番苦労したのは、組織作りと思っていましたが、そのことについてはあまり触れられていませんでした。

ただ、今回は、組織を作る方法や、人に仕事を任せる方法、人と仕事をするということについて書かれていました。

かなりのボリュームで内容も濃いのでどこを書くか迷いました。
組織作りについては量が多いのでこの書評には載せませんでしたので、その部分にもご興味がある方は読んでみていただけることをお勧めします。
難しい言葉などもあまり使われておらず、読みやすい本です。

目次

【第一部 光と陰の軌跡】

第1章 わが事業家人生

第2章 少年時代に遡る武道の心と「射止める力」

第3章 ジュリアナ東京、ヴェルファーレ

第4章 グッドウィル、コムスン。そして年商7700億円に

第5章 バッシングの波、奪われた座

第6章 人生のシフトチェンジ、NYで再びの成功へ

【第二部 起業家インキュベーターの実践】

第7章 未来ある経営者を支援する立場に

第8章 本質、センターピンを見極めよ

第9章 経営トップが何よりも重きを置くべきこと

第10章 事業展開における心得

第11章 M&A成功の秘訣

第12章 株式上場の心得

第13章 「なりたい自分」を追求せよ

第14章 すばらしい経営者たち

【第三部 世界で勝つには、戦略的思考力!】

第15章 アメリカの国の強さと教育システム

第16章 アカデミックの素地を鍛える英語

第17章 サッカーでアスレティック枠に挑戦

第18章 自信、守り、驕り、成長

第19章 チャンスとフェア

第20章 ゴール

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