次の点についてお伝えします。
・この本の気になった点を3つご紹介
私自身、ビジネス書、技術系書籍などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。
自動運転の時代がこれから来ると言われていますが、問題は多いということを書かれている本です。
有名なトロッコ問題をはじめ、人を軽視するな、という警告している本に感じました。
自動運転自体は、技術や要望としては進んでいきますので、将来、必要に応じてできるようにはなります。
ただ、現時点で何が問題なのかということを知ることは大切です。
問題があきらかになっているものは、解決策や対処方があります。
この記事は1、2分で読めますので、もしよろしければ目を通していただければと思います。
目次を最後に載せております。
書評「自動運転の幻想 上岡直見」【現時点での課題】
著者 上岡直見
出版 緑風出版
2019年6月30日 初版第1刷発行
歩行者・自転車を障害物とみなす
しかし「正しい技術の進化」の開発内容は車両対車両・ドライバーの安全への関心に偏っており、歩行者・自転車への関心がきわめて乏しい。むしろ歩行者・自転車を自動運転の障害物とみなしている。こうした発想の下で安易な機械信仰・AI信仰に依拠して公道走行が拡大してゆくと、特に歩行者・自転車に対してはむしろ新たな危険性が発生する。それどころか自動運転車の普及のために歩行者・自転車の公道を制限する論説が登場してくる。
出典 自動運転の幻想 P.19
車自体が持っている特性として、小林一茶の「雀の子 そこのけそこのけ お馬が通る」という面があります。
車に乗っていると、自転車や歩行者が邪魔に感じる心理とも言えます。
車は人よりも強い乗り物です。
強いというのはぶつかったら人がやられてしまう、という意味です。
また、車に乗ることで人の気持ちが大きくなるという部分もあります。
大企業や、暴走族に入ると強くなった気がするのと同じ心理ですね。
こういった心理はだいぶ減ってきているように感じます。
かつては車を持つことがステータスだという時代もありました。
最近は車も乗り物の一つであり、シェアリングなどが進むことによって、共通の乗り物という形になっていきます。車中心だという、こういった、安易に考える人は減っていくでしょう。
ただ、自動運転であれ、そうでなくても歩車分離は見えない形(電子的に)で行われていく必要はあるでしょう。
制限速度は守られることが少数の中で
別の難題として、多くの車が実態として法令違反(制限速度超過、黄信号突破)で走行している状況で、法令を順守して走行する少数の車が存在するとむしろ混乱の要因になる関係はしばしば指摘されている。「あおり運転」されるかもしれない。するとAIは搭乗者を守るために法令違反をすべきだろうか。現時点での警察庁の自動運転に関するガイドラインでは法令の順守を規定している。警察庁は「制限速度を超えてもいい」とは公言できないだろうが、現実の車は紙の上ではなく路上を走っているのである。この矛盾を解消するための現実的な説明は、公的機関からもメーカーからも全く提供されていない。
出典 自動運転の幻想 P.52
ここについては、今後もグレーのままに進むと思われます。
実際、テスラなどの自動運転機能がついている車は制限速度を認識します。
その制限速度に対して、どれだけプラスかマイナスか速度を設定します。
その速度で走ります。
つまり、メーカーとしては法令遵守というよりも、流れにのった運転ができるように設計しているということになります。
信号の認識もアップデートで対応されていくようですが、これは黄色ならばとまる、ということがルールになっていきそうな気はします。
自動運転は追突事故(もらい事故)が最初は多そうです。
追突事故をされる人は、よくされるようです。
つまり、そういう運転をする人は慎重な人が多く、一般的な人が「進む」ところで「止まる」のでしょう。
自動運転はその点、今の速度や流れにかかわらず、信号が黄色ならば確実に止まる特性がありそうですから。
本当は、道路ごと、交差点ごとの微妙な補正情報や事故の起こりにくい速度、曲がる、止まるタイミングがビッグデータとして収集されてその都度通信されていくことで最適な運転にはなるでしょう。
先進国の夢
糸川英夫は一九八〇年代に「未来学者はバラ色の未来を描く。それはかつては、モータリゼーション到来の夢であり、今はコンピュータと通信技術がドッキングする社会の到来の夢である。しかし、それらの夢は地球上の人口の二十パーセントにも満たない富裕な先進国の夢にすぎない」と述べている。この予想は現実となっている。
国別の車保有台数は統計から容易に知られるが、各国の人々が車の恩恵をどれだけ享受しているかはまた別の観点が必要である。
出典 自動運転の幻想 P.169
糸川英夫さんというのは、日本のロケットの開発をされていた方ですね。
現時点での車というのはとても高価なものです。
とても手軽に購入できるものではありません。
そのため、先進国だけでなく、途上国だとしてもシェアリングによって、自動運転が行われていくようになるのでしょう。
そうはいっても、その導入をもとめられていない国々も多くあります。
最初は車ではなく、まずバイクを買ってそれにみんなで乗るというアジアに国を見たことがある人もいると思います。
インドネシアの現地の弁護士と話したことがありますが、最初はバイク、それからお金がたまると車に乗るということを言っていました。そして、子供はKUMONに入れる、というスタイルらしいです。
ただ、自動ブレーキなどある部分部分については、途上国に車が輸出されたのちも整備できる環境があればいきてきます。つまり、道路との通信や車車間通信といったところの部分は使えませんが、車単体に機能としてつけたものは有効でしょう。
現在も、日本の古い車はアフリカなどに輸出されます。「ETCカードが挿入されていません」は現地では有名な日本語だとか聞いたことがあります。エンジンをかけるたびに聞かされるそうです。
非常にたくさんの問題提起がされています。
ただ、その問題点があるからこそ、技術の発展があります。
とても読みやすい本でしたので、手にとって見られることをおすすめします。
目次
はしがき
第一章 自動運転の基本事項
- 自動運転に関する基本事項
- 日本の技術開発の経緯
- 自動運転とAI
- 自動運転の「レベル」
- 自動運転と軍事
- 自動運転の課題
第二章 自動運転の障壁
- 認識と判断の壁
- ロジックの壁
- 人と機械の分担の壁
- 処理能力やデータの壁
- 車外とのコミュニケーション
- 情報の管理
- 道路交通法の壁
- 自動運転車の事故は誰の責任か
第三章 自動運転車と交通事故
- 自動運転車と事故
- 交通事故は構造的な問題
- 日本の運転慣習と自動運転
- 車と歩行者の関係
- 事故はスピードの問題
- 自動運転の社会的受容
- 悪質運転は防げるか
第四章 人と物の動きから考える
- 車「強制」社会
- 「停まる凶器」
- 人口希薄地帯のモビリティ
- 自動運転車の普及の可能性
- 新しい移動サービス
- バスと自動運転
- タクシーと自動運転
- 「人が不要」という幻想
- 物流と自動運転
- 自動運転車と格差
- 国際的な不公平
第五章 経済とエネルギー
- 自動運転と自動車産業
- 内需と輸出
- EVは「走る原発」
- 電源としてのEV
- FCV(燃料電池車)も「走る原発」
- エンジン車も「走る原発」
おわりに