次の点についてお伝えします。
・この本の気になった点を3つご紹介
私自身、ビジネス書などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。
中国の大手三社の技術顧問を務める孫さんという方が書かれた本です。
中国から見た5Gの捉え方、中国国内ではどのようなことが起きているかなども参考になりました。
また、こういった新しい技術というのは規格が重要なのですが、その使われている規格についてもとりあげられていることが特徴です。
この記事は1、2分で読めますので、もしよろしければ目を通していただければと思います。
目次を最後に載せております。
書評「5G時代 孫松林」【中国と世界でどのように広がるか】
著者 孫松林
訳者 配島亜希子
出版 CITIC Press
2020年11月16日 初版第一刷
端末だけではなく、基地局が重要
通信機器は一般的に、「コアネットワーク設備」「アクセスネットワーク設備」「ユーザー端末」の3つの専門分野から構成されている。コアネットワーク設備とアクセスネットワーク設備を製造する企業を通信機器メーカーと呼び、取引対象は各国の通信キャリアが主体となる。ユーザー端末を製造する企業を端末メーカーと呼び、取引対象は消費者である。
2017年の通信機器メーカーの世界市場シェアは、ファーウェイ、エリクソン、ノキアで全体の約4分の3を占めている。また、2019年3月5日、デローログループのレポートによると、2018年の通信機器メーカーの世界市場シェア上位は、上からファーウェイ、ノキア、エリクソン、シスコシステムズ、中興通訊という順位だ。なかでもファーウェイは約29%を占め、過去5年間連続で急速な成長を遂げている。
出典 5G時代 P.079
普段使うのは、私たちは端末ですの端末ばかりに目が行きますが、実際は国内だけでもそれを支える何万の基地局があります。上の文章の「通信機器」というのは、基地局で使われる機器のことです。
基地局というと日本も昔は強かったのではないかと思いますが、今ではみるかげもありません。
ただ、このファーウエイについては、アメリカが締め出そうとしているところもありますので、この先はなんとも言えないところです。
ちなみに、ファーウエイも、中興通訊(ZTE)も中国の会社です。
それだけ、中国のメーカーの力が強いと言えます。
エリクソンとノキアはヨーロッパですね。
総務省のサイトにも2019年のシェアの図が載っています。
スマート街路灯
2019年8月8日、広東省は「スマート街路灯テクノロジー規範」を発表し、スマート街路灯のシステム設計、施工、検査・検収・運用、メンテナンスについて規定した。これは中国初の省レベルでの「5Gスマート街路灯標準仕様」である。
現在、ファーウェイとノキアはスマート街路灯のソリューションを打ち出している。ファーウェイは「PoleStar2.0」を発表し、5G移動通信、スマート証明、スマート監視、IoT、IoV、スマートエコ、地域情報の発信などさまざまな事業に対応すると表明した。
また、中国鉄塔も5G基地局搭載の街路灯の建設を行う。5G基地局建設を手がける通信キャリアから、現在すでに計6万5,000柱を受注しているという。
出典 5G時代 P.123
基地局には電源が必要です。そのため、街路灯を使えば電源もとれるし、人のいるところを中心に基地局を設置できる利点があります。
そもそも5Gは高い周波数帯を使いますのであまり電波が飛びません。
そういうところも含めて注目されています。
認可についても土地の所有権などをあまり気にしないで、あくまで今ある街路灯のリニューアルということで対応できます。
この街路灯はただの基地局にするのではなく必要に応じた明るさにすることや、監視カメラをつけることなども予定されています。
街路灯だけでなく、信号機もスマート化しています。
日本国内には、約21万の信号機があります。
通信で制御できる信号はそのうち三割程度とのことですので、通信機能をつけることは街路灯よりむしろ重要です。
信号で誰もいないのになぜ、待たなければならないのかと思う経験を持った人は多いと思います。
それは信号が、現時点では「バカ」だからです。
交通量が多いのか、待っている人が多いのか、そういった判断を信号機ができるようになればよりスムーズな交通になります。
マンホールに基地局をつけるというアイディアもあるようです。
(日経クロステックより)
大規模アレイアンテナ
4Gネットワークの2本/4本/8本のアンテナと比較し、5Gの基地局には最大256本のアンテナを使用している。それらの2次元配列により、3Dビームフォーミングを実現した。電磁波ビームの照準をユーザーに合わせることで、水平・垂直両次元の空域で制御でき、通信路容量と通信可能範囲を大幅に向上させる。さらに、アンテナビームは移動するユーザー端末を追跡することができる。ユーザーを中心とする理念の実現は、5Gが高速通信を実現する上での重要な技術保証になるだろう。
出典 5G時代 P.146
アレイアンテナというと20年前の大学院の研究室で作っていた学生を思い出します。位相をずらしてビームの方向を変えることができるもので技術的には新しくはないです。原理はもっと古いかと思います。
ただ、それが安価に制御できたり、追尾できるようになったところが新しいです。
それについての解説がこの本にも載っています。
Massive MIMOという名前ですが、MIMOはMultiple Input Muliple Outputでマイモと読みます。
送受信のアンテナがM本なら、通信容量はM倍に増加すると説明されています。
このような形で、どのように高速通信を実現するのかなどについて技術的な視点からも書かれています。
そのほかにも、ビッグデータ、VR、AR、AIなどについても記述されています。
少し難しめなところもありますが、実例が多く、中国で起きていることなどを交えながら書かれているために興味深い本でした。
もしよろしければ、手にとっていただければと思います。
目次
日本の読者へ
はじめに〜5Gが経済発展の新たな幕を開ける〜
第1章 時運に乗って登場した5G
- 5Gの登場は世界を変える
- テキスト言語からIoEへ
- 世界各国の5G展開、戦略的高点の争奪戦
- 中国の5Gは世界をリードする
第2章 5G産業チェーンの自己再構築
- 中国通信業界の苦難と成長の30年
- 移動体通信の産業チェーンの構造
- 5Gは次世代モバイルインターネットを創造する
- 産業チェーンの再構築が育てるニューエコノミー
第3章 未来の暮らしに力を与える5Gテクノロジー
- 5Gの標準化のプロセス
- 5Gの核心となる8大テクノロジー
- 5Gの高性能たる所以を解く
第4章 5Gは新テクノロジーを隅々まで浸透させる
- 5Gはデジタル経済の推進力
- 5Gとブロックチェーンの相乗効果
- 5Gはクラウドネットワークとの融合を加速
- 5GがAIを普遍的な存在に
- 5Gはビッグデータのために生まれた
第5章 5Gは経済成長の新たなエンジンに
- 5G+映像
- 5G+IoT(モノのインターネット)
- 5G+V2X(車とすべての通信)
- 5G+インダストリアル・インターネット(産業のインターネット)
謝辞