SDGs 書評 藤井聡

書評「インフラ・イノベーション 藤井聡」【日本再生の具体的な取り組み例】

次の点についてお伝えします。

・この本の気になった点を3つご紹介

私自身、ビジネス書などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。

著者の藤井さんは、京都大学の教授で土木工学系を専門とされているようです。
この本は、日本各地でいままで取り組んできたインフラ開発の実例と成果について載っております。

土木系の雑誌の連載がベースとなっているようですが、写真や図が多く、私のように全くの素人でも読みやすくわかりやすく説明されています。

川、ゴミ、鉄道、災害に強い都市、水力、車、船、飛行機と多岐にわたって実例が載っています。

記事最後には目次を載せております。

この記事は、1,2分で読めますので、もしよろしければ目を通していただければと思います。

書評「インフラ・イノベーション 藤井聡」【日本再生の具体的な取り組み例】

インフラ・イノベーション

著者 藤井聡
出版 育鵬社

川のそばのテラスは古くて新しい

大阪府は、この年に「水都大阪2009」という、歴史的に「水の都」と呼ばれてきた大阪の伝統をふまえたイベントを開催した。開催地は北浜を含む中之島公園を中心とするエリアだった。
このとき、北浜の3つの店舗で、イベント期間限定で、「テラス」を仮説することになった。そしてこの「仮説」的なテラスが、イベント終了後も「継続的」に設置されることとなり、それが今日に至っている。
しかし、このテラスを設置することは、「河川管理」の点からいうと容易なことではなかった。

出典 インフラ・イノベーション P.34

テラス席は、人気です。外の天候に左右される部分はありますが、だからこそテラス席は人気があります。
特に、このコロナ禍においてはテラス席の方が換気が不要なので良いかもしれません。

実際、川べりのテラス席というと、なかなか思い浮かぶ場所がありません。
東京、飯田橋駅の「カナルカフェ」が川べりのテラス席ですね。どちらにしても、かなり少ないです。

江戸時代の絵などを見ると、川べりにもお店は出ていたようですので、きっと昔は多かったのだと思います。

なぜ少ないかといえば、「河川管理」というところで、川べりは個人所有ではないということがあります。そのために勝手に店を出すことができません。

この本に載っていますが、道路に飛び出ているようなオープンカフェはヨーロッパではよくみられるけれども国内ではあまり見られないのとおなじ理由です。
道路は個人の私有地ではないというところから、はみ出てはいけないというルールがあるからです。
そのルールを日本は厳格に守るために、一切のそういう「遊び」がなくなっています。

川べりに店を出すには、ただ、出せば良いわけではありません。

この北浜にしても、大阪市の河川システム全体の「治水事業」と「土木技術」があったから実現できたと書かれています。
川べりに店を出すにしても、豪雨が降ったら流されるようなところには誰も店を出せません。
河川の水位が豪雨や高潮であっても一定になるようにコントロールされているそうです。

かつては河川の氾濫や、洪水に悩まされてきた土地というのは、高度に工夫がされており、簡単には決壊したりすることもなくなるようにできていることが多いです。
それを逆に利用して、カフェやレストランを川辺に出すことで、その土地の魅力をあげていくことは充分にできることです。

水辺で楽しむことをテーマに北浜を紹介しているサイトがありましたので、リンクを貼っておきます。

参考 MIZBERING

災害に強い都市、六本木ヒルズ

そもそも首都直下地震の折りにはあ、首都圏の電力供給量の多くが棄損すると同時に、電線網も大きな被害を受け、結果的に極めて広い範囲で電力供給が途絶え、停電となることが危惧されており、これが今、首都直下地震対策における最大の懸案事項の一つとなっている。
ところが六本木ヒルズは、外部からの電力供給がすべて途絶えてもなお都市活動を継続する能力を備えているのである。というよりもそれ以上に、周辺に「余剰電力」を供給する能力すら保持している。

出典 インフラ・イノベーション P.105

六本木ヒルズといえば、森ビルの代表的な建物です。
森稔さんがどれだけ苦労して赤坂アークヒルズや六本木ヒルズを作ったかなどは多くの書籍にも述べられています。
確かに、森さんの著作の中でも、災害についての対策はアークヒルズの時から言われていました。
ヒルズにはその考えが根付いています。

六本木ヒルズは、小さな電力会社を備えていると言えます。
そのため、2011年の震災の計画停電などの時には、逆に東京電力に電力を供給していたこともあるくらいです。

仕組み的には地下にガスエンジン発電機を備えており、その熱も再利用するコージェネレーションシステムとなっています。
何かオイル系をためておいて発電するのではなく、中圧ガス管という震災にも強いガス管を用いて供給されています。
東京ガスによれば、阪神・淡路大震災や、東日本大震災クラスでも十分耐えることできるものとされています。

日本は、地震大国ですので海外から見たときにもその点から避けられることもあります。
しかし、こういった対策をしているビルであれば企業が入居しようという人たちも出てきます。

六本木ヒルズ並みの施設を用意するというのは簡単なことではありませんが、まずは通信関係の企業、消防や病院、学校、役所といったところから、こういった「小型電力会社」を持つようになっていくと災害にも強い都市が作れます。
もっと長期的な視点でみると、街ごとに小さな発電所があるという形になれば良いのかもしれません。それがもっと進むと各家庭に一つですね。ここまで分散すれば最強です。いつかはそうなるとは思います。

車を締め出したら人がくる

ところで、この四条通の「車線を削っても混乱しない」という例は、単なる一事例だが、こうした事例は、世界中で見られる普遍的なものであることを、ここで強調しておきたい。
筆者も参画して行った国際共同研究では、日本、ドイツ、アメリカ、イギリスなどの12の国の60以上の「車線の削減」事例を集め、分析を行った。その結果、おおよそどこの場所でも「車線の削減」が行われれば、「大渋滞」「大混乱」が起こるだろうと事前に危惧されていた一方、実際にはほとんどのケースで、事前に危惧されたほどの混乱は見られなかった、という実態が明らかとなった。というよりもむしろ、「大規模で長期的で重大な混乱」が報告された事例は、結局一つもなかったのである。

出典 インフラ・イノベーション P.181

京都市の「四条通」は、都心部にあるメインストリートです。多くのデパート、ブランド店が立ち並ぶ通りです。
もともと、この通りは、片側2車線の道路で、歩道は、両側に3.5mずつ用意されていました。
それを、歩道を6.5mずつ約2倍に広げ、道路を片側一車線にしたというものです。

これは大きな挑戦だと思います。
京都市のサイトにも載っております。

こういった車中心ではなく、人を中心にするということは、ますます起こると思います。
今、車についても必ずしも車でなくても、という部分はあります。

もう少しいうと、タクシーが本来もっと価格を下げて活躍する場になるはずです。
タクシーについてもいろいろ書きたいですが、そこはおいておきましょう。

この歩道の拡張により、地価もあがったそうです。
つまり、それだけ人にとって魅力のある土地になったということができます。

店が立ち並ぶ通りなのに、車が中心では人は歩けないし、避けたくもなります。
また、それほど通りが多くないにも関わらず2車線だったりすることで、駐車車両が増えることで結局片側1車線がつぶれている通りも多いです。

車線を削れば大渋滞になるというのが一般的な予測ですが、それは最初だけで、長い目で見るとそういったことが起きなくなるということは面白いです。

以上、3つご紹介しました。

このほかにもたくさんの事例が載っております。
日本をどうやって強い国していくのか。
たくさんの施策が載っていますので、もしよろしければ、お手にとっていただければと思います。

目次

1章 インフラ・イノベーションと日本再生
2章 現代日本の、川文化のイノベーション:北浜テラス
3章 港の整備が「まち」を作る:小浜港の港湾イノベーション
4章 「下水資源」イノベーション:都市に眠る宝の山
5章 鉄道が導く「都市と国土のイノベーション」
6章 都市の強靭化:六本木ヒルズのエネルギー・イノベーション
7章 日本を救う水力発電のイノベーション
8章 「道の駅」による地方再生イノベーション
9章 国土保全イノベーション:「砂防」が守る日本の国土
10章 地方再生の街路イノベーション:「クルマ車線」を削って賑わう京都・四条通
11章 食産業インフラ・イノベーションが日本を救う
12章 地域イノベーションを導く「リアル・どこでもドア」:高速道路のストック効果
13章 日本を救う港湾インフラ・イノベーション:「基幹航路」を守り、日本を守る
14章 空港がもたらず地域イノベーション:「虚構」の空港バッシング

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