次の点についてお伝えします。
・この本の気になった点を3つご紹介
私自身、ビジネス書などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。
この本は別の記事「ファンベース」に書かれた内容を基本としながら、イラスト、マンガでわかりやすく説明しています。
特に、前著が考え方の基本とすると、今回の本は企業の具体的な取り組み例を中心に解説されています。
前著がかなり詳しく載っておりますので、2冊合わせて読んだ本が理解が深まります。
ちなみにこの「ファンベース」という考え方は、パレートの法則をベースにした考え方です。
パレートの法則自体は一例として顧客の20%が売上の80%を占めているというものです。
では、そのコアなファンに対して何を提供していくことがファンを増やす、しいては全体の売上、価値を伸ばすことになるのかについて述べられています。
この考え方自体は、SDGsにも通じるところがあります。
書評「ファンベースなひとたち 佐藤尚之・津田匡保」【人に喜んでもらいたいという気持ちがベース】
著者 佐藤尚之・津田匡保 漫画 おぐらなおみ
出版 日経BP
企業も外から顔が見えなければ、企業からもお客の顔は見えない
ネスカフェアンバサダーを始める前は、「利用者の顔が見えない」と言いながら、自分たちの顔も見せていませんでした。でも、企業がサービスを使ってほしいのは、感情を持った「人」ですよね。だから大変だけど企業の人も前に出ていかないといけないんです。向き合っていかないといけないんです。それが本当の「サービス」なんですよ。人と向き合うのは時間と手間がかかります。でも、それができないサービスには未来がないと思っていますし、やっている人も全然楽しくないはず。新しいサービスを始めるときには最も意識してほしいポイントだと思っています。
出典 ファンベースなひとたち P.150
従来の企業というと、顔や考え方も見えないことが殆どでした。しかし、最近はSNS等で「中の人」のコメントがあったりします。それも一つの「顔」になります。
企業というと、実態のない何か大きな力を持った組織というイメージがあります。しかし、どんな企業であっても人のいない企業は存在しません。
これから、どれだけAIが進んで人工知能が会社経営をできるようになっても企業には人がいるでしょう。
人が運営する以上、誰かに喜んでもらいたい、という気持ちは必ずあるはずです。
こうやっていれば、金が手に入るから何をしてもいいんだ、という人たち中にはいるでしょう。
その考え方では長続きしないのは明らかです。
これからは、積極的に「中の人」が顔を出し、直接ユーザーと会い、意見を集めて一緒に企業のファンを作り、価値を上げていく形が大切になります。
なくなったら困ると思われる企業にならないといけない
この本に紹介されている「イケウチオーガニック」というタオルメーカーがあります。
ここについては、本文から離れます。
代表の池内計司さんが書かれている文章には、ある倒産の危機のことが書かれています。
2003年8月27日にある卸の会社が自己破産したそうです。
それにより売掛金2億4000万円の焦げ付きが生じ、年商70%を依存していた最大の取引先が消滅したことが一番の問題だったと。
その当時、日本一のタオルハンカチのOEMメーカーとして売上の大半を稼いでいました。
追加融資を受け、OEMメーカーとして再起を図ることもできますが、その方がリスクが高いと判断したそうです。
(OEM・・下請け生産すること/相手のブランド名で自社の製品を売る形)
そこで、前年は売上の1%を占めていなかった自社ブランド「IKT」に軸足を移して再建をはかりました。
ご本人いわく、無謀の極みと言われています。
9月10日からIKTの全国販売が迫っている中、その前日に民事再生法の適用を申請しました。
この民事再生が決まった時に、お客様から代表の池内計司さんの公開メールアドレスに大量の激励メールが届いていたそうです。
その中の一通に
「タオルを何枚買えば、池内タオルは存続できますか?」
という内容があったそうです。
池内さんは「この言葉に私がどれだけ勇気づけられたか分かりません。」と述べられています。
本文には、具体的な数々のファンを広げていくための方法が載っております。
職人の顔が見えるということに重点をおいています。
そのため、HPにも詳しく職人が載っていました。
本文の内容とかなりそれてしまいましたが、この「なくなっては困る」と思われる企業にならなければ、企業としての存在意義が薄くなってしまうともいえます。
今までは、作れば売れるという時代だったからこそ、別にどこが作っていても、誰が作っていても良かった部分はあったかもしれません。
でも、今は選ばれる時代、選んでもらうためには、誰が何のために、どういうものを作っているのか、をわかるようにする必要があるという一つの事例紹介です。
人間は人間にしか共感しない(本文より)
地元の人が地元を愛するようになると
一度都会に出た子供が田舎に帰ってくる
移住者が増える
いくら新しい施設を作っても古くなってしまうが、地元の人の自信は失われない
(中略)
結局 人間は人間にしか共感しない
VRなどテクノロジーがいくら進化しても一番大切なのは人間の魅力
出典 ファンベースなひとたち P.280
ここの単元自体は、里山十帖という新潟の宿の取り組みの紹介になっています。
地域創生を目的として運営されています。
また、少し本筋とずれてしまうのですが、
本文中に、人間力を磨きなさい、とここの宿の紹介に出てくる岩佐さんはスタッフに言っているそうです。
そして、そのためには、
「一回できた価値観を壊して再構築する努力」
が必要だと。
価値観というのは、生きていく中で作られていくものです。
でも、新たな経験や考え方に触れて、再構築するからこそ、より良いものが生まれます。
価値観というものは、計算の答えのように、いつも1+1=2ではないということです。
ファンベースというのは、人が中心だということがあります。
そういう意味でも、この人間力を高めることが一番必要なことです。
目次
第1章 ファンベースさとなお集中講義
第2章 ロングセラーブランドが実践するファンベース
- 読売巨人軍編
- カゴメ編
- レタスクラブ編
第3章 ベンチャー&新規事業で必要なファンベース
- ネスカフェ アンバサダー編
- mineo編
- ユーグレナ編
- ADDress編
第4章 愛されブランドに学ぶファンベース
- イケウチオーガニック編
- スープストックトーキョー編
- 里山十帖編
- とはいえ、ファンは各社それぞれに違う