佐藤尚之 書評

書評「ファンベース 佐藤尚之」【広告の仕方の本だけど生き方が問われる】

次の点についてお伝えします。

・この本の要点3つご紹介

私自身、ビジネス書などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。

この本は、パレートの法則(全体の20%の顧客が売上の80%を占めている)を前提としています。
商品、サービスにはストーリーがあり、その価値を伝えていくことでファンを増やしていきます。
そして、そのファンに対して、どのように接していくことが大切なのかが具体的に書かれています。

そこにはユーザーに対する共感力がベースになっているように感じました。
そして、それを伝える社員も当然ファンでないと成り立たないものです。

もう一冊「ファンベースなひとたち」もあります。
そちらは、事例をマンガベースで紹介されており読みやすくなっています。

書評「ファンベース 佐藤尚之」【広告の仕方の本だけど生き方が問われる】

ファンベース佐藤尚之

著者 佐藤尚之
出版 筑摩書房

友人のオススメほど強いものはない(本文より)

価値観が近い友人がツボにはまるコンテンツは自分もツボにはまる可能性が高いし、価値観が近い友人が愛用しているモノは自分も愛用する可能性が高いし、価値観が近い友人が熱中するコトは自分も熱中する可能性が高いからだ。世の中に様々な情報が砂嵐のように吹きすさぶ今、こんなにありがたいものがあるだろうか。

引用 ファンベース P.73

佐藤さんは、このような形でファンがファンを広げていくようになる仕組みを作ることがファンベースのゴールだと言われています。

今、ネットで購入する際にも参考にするのはレビューです。
当然のことながら、できれば身近に使ったことがある人がいて、その人から情報を仕入れる方が情報量、信頼性は多くなります。

本当に使って良かった、というものは誰だって人に伝えたくなりますし、本当にまずかったものは、まずかったと伝えたくなります。

たった、一人がFacebookやツイッターに投稿するだけでも100人以上に伝わります。(本文にはFacebookの世界
今の世の中はそういった情報の伝達がインターネットによって非常に早くなりました。

だからこそ、このファンベースという考え方がますます必要になるということです。

ファンの支持を強くするための3か条

・その価値自体を、アップさせること→「共感」を強くする
A.ファンの言葉を傾聴し、フォーカスする
B.ファンであることに自信を持ってもらう
C.ファンを喜ばせる。新規顧客より優先する

・その価値を、他に代えがたいものにすること→「愛着」を強くする
D.商品にストーリーやドラマを纏(まと)わせる
E.ファンとの接点を大切にし、改善する
F.ファンが参加できる場を増やし、活気づける

・その価値の提供元の評価・評判をアップさせること→「信頼」を強くする
G.それは誠実なやり方か、自分に問いかける
H.本業を細部まで見せ、丁寧に紹介する
I.社員の信頼を大切にし「最強のファン」にする

(さらに次のステップがありますが、ここでは割愛します)

出典 ファンベース P.93,P.99より

本文には、このそれぞれの項目について詳細に方法が載っています。(J~Oまでその先もあります)

商品やサービスを提供する側がすぐにもできることは、Dです。
これをやっていない店も多いと書かれています。

「良いモノを作っていれば、やがて売れる、と思っている人が多いけどもそれは違う」と聞いたことがあるかもしれません。
もちろん、悪いモノが売れるというわけではありません。

良いモノを作って、その良さや、苦労した点まで伝えるからこそ、それが宣伝になり、ファンを作ります。

特に職人気質でモノを作っている人というのはそういった部分、つまり自分が苦労している部分についてはあまり見せないようにしてしまいます。

そのために、本当に良いモノやサービスを提供していても、使ったことのない人からするとその良さがわからない。
なので、あまり売れないということが起こりえます。

キレイゴトを楽しむ(本文より)

実際にファンベース施策を始めるとわかることだが、なんだかマザー・テレサみたいな気分になることも多い。大衆(マス)という塊ではなく、人間ひとりひとりを相手にする分、いろいろなことが起こるのだ。
また、上司から業績への影響を問われたり、日々の数字に現実的に向き合っていると、ファンベースなんか単なるキレイゴトに思えて、空しく思える日もあるかと思う(実際には売上に直結しているのだけどね)。
でも、あえてキレイゴトを言うが、あなたは人生において何を大事にするのかということを試されているとボクは思う。何のために仕事をし、何のために生活者にその商品を売っているのか、である。

出典 ファンベース P.269

佐藤さんはこのように述べらえています。つまりは生き方が問われていると言い換えることができると思います。

本文の中で、従来の広告は「妨害型」だったと言われています。
今でもそうですが、テレビや動画であれば、番組を中断して広告を流し、無理やり全員に同じものを見せる。それを繰り返すことで印象付けて買わせる。

でも、これからの広告、ファンベースは、「提供型」だと。
つまり、その人が望むもの、応援しているモノが紹介される。だから、情報を提供しているから提供型というわけです。

サービスやモノを提供する側の視点でも、消費者の視点でも、ファンベースの考えの方がずっと良いと思います。
なぜなら、サービス等を提供する側でも誰かに喜ばれるものを提供できる方がどれだけうれしいかわかりません。
当然、それを受け取る側も「これが大好きなんだよね」というものでモノを選ぶことができるというのはとても幸せなことです。

これからますます、この考えが広がっていって欲しいと思います。
モノやサービスを作る側としても、消費者としても参考になる書籍ですので、一度読んでいただくことをお勧めします。

目次

第一章 キャンペーンや単発施策を、一過性で終わらせないために

第二章 ファンベースが必要な3つの理由

(1)ファンは売上の大半を支え、伸ばしてくれるから

(2)時代的・社会的にファンを大切にすることがより重要になってきてから

(3)ファンが新たなファンを作ってくれるから

第三章 ファンの支持を強くする3つのアプローチ~共感・愛着・信頼

第四章 ファンの支持をより強くする3つのアップグレード~熱狂・無二・応援

第五章 ファンベースを中心とした「全体構造」の3つのパターン

(1)中長期ファンベース施策のみで構築する

(2)短期・単発施策でファンをゼロから作っていくところから始める

(3)中長期ファンベース施策を軸に、短期・単発施策を組み合わせていく

第六章 ファンベースを楽しむ(もしくは実行の際のポイントの整理)

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