カルティエ最強のブランド創造経営 書評

書評「カルティエ 最強のブランド創造経営 長沢伸也 杉本香七」【ブランド分析レポート】

次の点についてお伝えします。

・この本の気になった点を3つご紹介

私自身、ビジネス書、技術系書籍などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。

ブランドモノは好きな人が多いと思います。
その歴史について深くというのではなく、それぞれのハイブランドがどのような戦略をとっているのかを分析し、レポートにまとめた、そんなイメージの本です。
著者はブランドについて長年研究をされている方です。

この記事は2、3分で読めますので、もしよろしければ目を通していただければと思います。
目次を最後に載せております。

書評「カルティエ 最強のブランド創造経営 長沢伸也 杉本香七」【ブランド分析レポート】

編著 長沢伸也
著 杉本香七
出版 東洋経済新報社
2021年4月8日発行

クオーツ・ショックとその後

日本の時計メーカーが起こしたクオーツ・ショックにより30数年前に瀕死だったスイス時計産業は「機械式時計」という名のラグジュアリー戦略によって劇的に復活した。30数年前にスイス時計産業が直面した危機とそれを乗り越えた戦略は、現在および近未来の日本の製造業が生きる道を示している。

出典 カルティエ最強のブランド創造経営 P.029

時計は、時間を見るもの、というところでは、GPS時計や電波時計といったものであれば完璧な精度を誇ります。
そもそも、スマホを持ち歩いている今、正確な時間はそれらを使ってもみることができます。

ところが、スイスの高級時計は精度は当然それらより劣っていますが、価格は天井知らずです。
理由はそこに価値を見出す人たちが多くいるからです。

かつて、日本の時計メーカーが起こしたクオーツ・ショックがあります。もともとは時計は機械式でした。そのためにある程度の価格はします。機械式というのは、ばねやゼンマイを用いており、定期的にゼンマイをまく必要もあり、時間も合わせる必要のある時計のことです。
ところが、クオーツという水晶に電気を加えることで正確に発信するICチップを用いることで価格は10分の1以下になり、今では1000円も出せば買うことができるようになりました。

機械式時計は精度は1日に何秒もずれます。クオーツであれば、1日に1秒もずれないでしょう。そのため、正確に時を刻むことを目的とするのであれば、クオーツ時計が優れていました。

そのために1970年から1990年頃に多くの機械式の時計メーカーが倒産しました。

しかし、その後、高級時計として機械式時計はよみがえってきました。
200万、300万円するのがザラにあるのが、高級時計です。

正確な時を刻むためのものではなく、一つの歴史をもった趣味として使われるようになったから、機械式時計も高級品としてよみがえることができました。

今、多くの家電が安く品質の良い、韓国や中国製メーカーに日本のメーカーはシェアを奪われています。
日本には多くの歴史のある企業があるわけですので、ハイブランドとして生き抜く方法があるのではないかと書かれています。

商品と歴史を重ねる

数ある名作時計の中でも同ブランドの中で最も有名な『タンク』には、100年以上の歴史がある。第1次世界大戦の終結を決定づけ、パリ解放に戦功があったアリー戦車団に敬意を表したものである。平和を導いた象徴と言われたルノー製戦車のキャタピラーをモチーフにしたデザインが特徴になっているこの時計は、1917年に初めてデッサンが描かれ、19年に発売された。タンクの特徴である角形のケースは、円形が通常だった時代において斬新であった。続いて、21年、22年、29年、36年にタンクの名前が付いた時計が発売され、基本的なデザインは踏襲されたまま様々なシリーズが展開され、現在に至る。

出典 カルティエ最強のブランド創造経営 P.137

少し、そこを目指しているものとして自動車メーカーのスバルがあります。戦前、中島飛行機として戦闘機などを作っていました。戦争の武器について語ることは日本ではタブーとされているところがありますので、それほど前面には出していないように感じます。ただ、かつては飛行機を作っていた歴史がある、ということを伝えています。

世界でも、創業100年、200年といった企業の半数以上が日本にあります。
それも製造業が多いです。

そういうところでは、日本の企業においても本当は出すことのできる歴史的、文化的価値をもっている企業があるのではないか、というところです。
この他の個所でも、日本の企業は合併などで簡単に名前を捨ててしまっていることがもったいないと書かれていました。

プレミアムとラグジュアリー

今となっては海外でもラグジュアリーブランドとしてのポジションを確立しつつあるレクサスは、7~8年前までに「自称ラグジュアリーのプレミアムカー」だと言われていた。ラグジュアリー研究の第一人者であるJ=N・カプフェレ教授らも、レクサスが自分たちはラグジュアリーだと言っているが、レクサスがやっているのはプレミアムブランドの戦略だと指摘している。ラgジュアリーとは相対的な比較級ではなく、絶対的で比較の対象がない最上級である。カプフェレらは米国でのメルセデスEクラスと比較したレクサスの広告を引き合いに出して、「比較をする時点でプレミアムブランドだ」と断じている。

出典 カルティエ最強のブランド創造経営 P.291

面白い点だと思います。
比較をして、こっちの方がいいものだ、というのは確かに高級品、ここでいうラグジュアリーではないです。

ラグジュアリーというのは安くて高機能なものをいうわけでは決してありません。
比類なきものを言います。

モノが出てきたばかりの時には、当然ですが、ラグジュアリーなものというのはありません。
車も、出てきたときには、車自体が、ラグジュアリーでした。
それが、普及していくことにより、存在がラグジュアリーでなくなります。

スマホが出てきて、まだ20年程度です。
ラグジュアリーなスマホというものは今はまだみません。(たまに純金製のスマホがあったりしますが、それは別にラグジュアリーではないです)
そういったところでは、ラグジュアリーなスマホ、なんていうのも出てくることがあるのかもしれません。

この本には多くのブランドが出てきます。
それらがどうやってその地位を勝ち取ったのかについてまとめられたレポートのように感じました。

もしよろしければ、手にとってみていただければと思います。

目次

はじめに

Chapter1 日本企業はラグジュアリーに学べ

Chapter2 日本企業が学ぶべきはLVMHよりもリシュモン

Chapter3 リシュモン傘下のブランド

Chapter4 歴史による正当性と真正性の向上

Chapter5 土地による正当性と真正性の向上

Chapter6 人物による情熱とこだわりの発現

Chapter7 技術による独自性と正当性の向上

Chapter8 まとめ、提言

Supplementary Chapter ラグジュアリー戦略、日本の萌芽的事例

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