テリーサ・マクフェイル 書評

書評「アレルギー 私たちの体は世界の激変についていけない 著 テリーサ・マクフェイル」【アレルギーでわかっていることをデータとストーリで】

次の点についてお伝えします。

・この本を読んで気になった点や気づいた点を3つご紹介

私自身、ビジネス書、歴史書、哲学書、技術系書籍などを年間少なくとも100冊くらいは購入して読んでおります。

アレルギーは現代では非常に身近な存在かと思います。
私が小学生だった40年くらい前は、花粉症の子供もほとんどいなかった覚えがあります。
確か、何かで読んだのですが1960年代は、花粉症は海外にあっても、日本には花粉症はいない、というような判断がされていたように思います。

私も、20代で花粉症になり、40代後半で喘息になるなど、様々な形でアレルギーは感じております。
いわば現代病でありながら、ほとんど今でも対処方法がわかっていないのが、アレルギーでしょう。
この本には、「こうすれば治る!」という本ではありません。

こういう事例があった、こういうことでアレルギーの人は困っている、どういう薬があった、という事実を膨大な調査からまとめた本になっています。難しい話をわかりやすく書いた本です。「まだ、わからないことだらけ」という分野だということもわかります。

この記事は、2,3分で読めますので読んでいただき、何か一つでも参考になることがあれば幸いです。

アレルギー 私たちの体は世界の激変についていけない 著 テリーサ・マクフェイル 東洋経済

きれいは汚い、汚いはきれい Fair is foul, foul is fair

本文にこの文面はないです。
このタイトルは、シェークスピアの「マクベス」での言葉です。

シェークスピアの戯曲での意味とは違いますが、この本を読んでちょうど思い出しました。
(戯曲の方では、「物事には表と裏がある」というような意味のようですが、内容は読み返してないのでググっただけです)

本題に入りますが、今から100年ほど前に「アレルギー」という言葉が生まれたようです。
つまり、比較的最近の言葉であり、発見されたものだといえます。

ある専門医は本の中で、こんなセリフを言っています。

「想像してみてください」と彼は言った。「もし人々を集めて、ずっと昔の暮らし方に回帰させることができたらどうなるか。殺虫剤なしで育てられた食べ物を食べる。無添加食品と幅広い種類を食べる。食器洗浄機や洗剤を使わない。何が起こるかわかりますか?もうアレルギーなんてなくなりますよ。それを証明できればと願うばかりです」。

P.251より引用

この本の中にも出てきますが、昔よく見た(今は知りませんが)洗剤のCM、お皿を手に取って「キュッキュッ」というのがありました。
あれが、まずいということも書かれています。

「きれい」になったというイメージですが、あの洗剤が体にはよくないそうです。

他にも、都会で生まれ育った子が、アレルギーがひどいので大きくなってから田舎に引っ越してもあまり効果はなく、初めから、田舎で育った方が、アレルギーの比率は下がる、というようなことが出ています。

都会は排気ガスなどの人口の物質が蔓延している反面、無菌状態になるように小動物や害虫は非常に少ないです。
田舎は、森や馬糞、さまざまな細菌が数多くあります。

「無菌室」で育つと弱くなってしまうのです。
昔、「ピーナッツ」アレルギーを避けるために子供に食べさせないようにする、という方針があったそうですが、そのために、「ピーナッツアレルギー」の人たちを多く生み出してしまったことがありました。

ただ、この「衛生仮説」は万能ではないけど、一部分においては正しいのでは、という表現にとどまっています。

「きれいは汚い(弱い)、汚い(細菌が多い)はきれい(強い)」

というところでしょうか。

アレルギー持ちは弱い?

この本の中に出てくる話で、1980年代の冒険の映画で「グーニーズ」というものがあります。

この物語の「ヒーロー」は、喘息持ちで、吸入器を使っています。
話の中で、「弱虫」と呼ばれ、不安になると、吸入器を持ち出します。

最終的には、吸入器を放り出し「強くなった」ということを表現します。

80年代の映画だから仕方のないことかもしれませんが、アレルギーなどで苦しんでいる人は「弱い人」という印象で描くこともあるわけです。
そこから「いじめ」や「差別」が生まれます。

確かに、メンタルの部分は体に大きく影響することはあります。
では、メンタルが強ければアレルギーにならないのか?といえば決してそうではありません。

この本の中に、2012年の調査では、何らかのアレルギーを持つ子供の三人に一人がアレルギーに関する「いじめ」を受けており、それを親に伝えたのは、五人に一人だったそうです。親は知らないことが大半だということです。

ストレス・運動・食生活・石鹸・化粧品

このアレルギーというのは、現代の生活が非常に洗練されたものだから起きたということができます。

赤ちゃんに履かせるおむつは、抗菌機能のあるプラスチック物質を含んでいて、そこからのかぶれから守るためにクリームを塗って曝露して・・というマッチポンプ的なことが起きているということも書かれています。
また、私たちは毎日、お風呂に入りますが、そこで使う石鹸、シャンプーなども問題があります。
外に出ることが少なくなり、運動量も数百年前の人とは大きく異なるでしょう。

「アレルギーという炭鉱のカナリア」と本文の一部の章のタイトルにされているのですが、人間の飼うペットもアレルギーになります。

炭鉱では、有害なガスに敏感なカナリアが弱ってきたら、有毒なガスがあることを、人が認識するより前に認識することができます。
それと同じで、自分のペットがアレルギーになっているのならば、同じように自分の環境や生活に問題があることがわかる、ということです。

もちろん、人の生活とペットの生活は異なりますが。

まとめ

この本の中には、アレルギーを避けるための一つのヒントとなりそうなことも書かれています。
ただ、人によっても、同じ人でも時期によって変わるように、正直、「アレルギーは難しい」ということがわかる本です。

その中でも、多くのデータから、子供を育てる時には、母乳の方が耐性が強くなる傾向があることや、途中で粉ミルクを使うとまずいとか、あくまで、そういうデータや、結果が書かれています。

また、アレルギーを持っている人がどういう苦悩を持つのか、ということも詳細にのっていますので、アレルギーでない人はそういう人の気持ちを理解するということもできるのではないかと思います。

なんらかのアレルギーを持っているかどうかも、おそらく、世代が新しくなればなるほど、その比率は高いのかもしれません。
そうすると、これからますます必要となる分野といえます。

少し分厚い本ですが、もしよろしければ、一度読んでみていただけることをおすすめします。

 

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