次の点についてお伝えします。
・この本の気になった点を3つご紹介
私自身、ビジネス書、技術系書籍などを年間少なくとも100冊くらいは購入して読んでおります。
世の中の「自己啓発本」とは逆とは言いませんが、まあ、同じ方向ではない本です。
本屋に行けば、たくさんの「自己啓発本」が並んでいます。
私も30年くらい前に「自己啓発本」に出会い、ずいぶん読みました。
確かに、「自己啓発本」で元気をもらい、積極的に行動ができることはあります。
一時的なエナジードリンクみたいなものでしょうか。
「自己啓発本」は、やる気はもらえますが、行動に結びつかないことが多いですよね。
なぜそうなるのか、ということもわかります。
ただ、「それだけじゃないんだよ」ということを教えてくれる本です。
どんな物事にも光と影があります。
それを改めて冷静にとらえ、自分の考え方を深めることができる本です。
この記事は、2,3分で読めますので読んでいただき、何か一つでも参考になることがあれば幸いです。
行動を起こすのにやる気は不要
いまだに営業の場や、教育の場では、「やる気」が重視されています。
しかし、「やる気」など不要だと書かれています。
「やる気」を出すのではなく、「行動を決める」ことが大事だと。
作家にしても、芸術家にしても、「やる気をだそう」とするのではなく、朝のうちに「何文字書く」「何時間書く」ということを決めたりはしても、やる気を出すために何かをするということはあまりない、と。
実際、ある有名な漫画家も、「締切があるから作品が書ける」と言っていたことを思い出しました。
毎日毎日書くために、今日の何時までにという締切があるから行動をしているわけです。
ゴールを設定することの問題点
ビジネスの世界でも、「ゴール」を設定することの重要さがよく言われます。
しかし、エベレスト登山での死亡事故を例に挙げ、登頂できたものの、帰り道で遭難してしまうという事故は絶えません。
昔から、「登頂後」に死亡していることが多いのです。
また、経営者にしても、「金持ちになる」ということを目標にして、多くの資産を得たものの、家族や子供からは見放されてしまっている人も多くいます。資産家で家族仲が良い例というのは本当に少ないと聞きます。
私がよくあげる、京セラ創業者の稲盛和夫さんも、短期的なゴールは設定しても、長期的なゴールというものは設定していない、というようなことを以前書かれていたように思います。もちろん、「世界一の企業へ」というビジョンは持っていました。
世の中では、猫も杓子も「ゴール」が大切だと言われています。
ビジョンは組織をまとめるためにも必要ですが、自分にとっての「ゴール」は、どうなのでしょうか。
「ゴール」を設定するから、達成できなくて落ち込むという側面を持ちます。
そして、「ゴール」があるから、副作用が生まれるわけです。
(「ゴール」があるからこそモチベーションがあがる、という人はそれを続けたらいいのではないかと思いますが、みんながみんなそうではない、ということも知る必要があります)
ポジティブもネガティブも包括して生きる
「良き旅人は計画を持たず、行先に執着せず」とは、中国の老子の言葉である。旅をするのに、これ以上いのすばらしい方法があるだろうか?
P.276より引用
この本の一番最後のまとめの言葉に使われています。
目標を持ち、死から目を背け、ポジティブに生きていくことが世の中では良いこととされています。
多くの広告が、若い女性を使うのも、一番、生物的には「死」から遠いという本能が人にはあるからでしょう。
(「若い」=寿命がまだある 「女性」=男性よりも生命力がある、命を産む→その結果、視聴回数、時間があがる)
ポジティブが悪いというわけでは決してないですが、その両方を見ることが大事だとこの本には書かれています。
まとめ
ベッカーによると、精神疾患とは、普通の人のように死を否定しようとするこころのメカニズムがうまく機能していない状態をいう。自分の存在がたいして重要でないこと、そしてほどなく死んでいく身であるということに気づき、その真実から目をそらそうと努力するが、他の人たちのようにうまく対処できない人たち。そういう人たちは、ついつい気分が落ち込み、最終的には精神疾患の状態になるのである。
P.239より引用
この文面は引用で、筆者としてもこれを推しているというわけではなく一例として取り出していた文です。
筆者としては、「死をポジティブにとらえろ」とも「死をネガティブにとらえろ」とも言っていません。基本的には、上の老子の考えにあるような、中立の考えを持ってはどうか、ということが主旨になりまs。
この本の面白いところは、他にもたくさんの「引用」があります。
私が興味を持ったのは、森田療法で有名な精神科医「森田正馬」に関することなども時々載っており、いろいろな、「生き方」に関する文の紹介がある点です。
そのため、この本を読んで、より、他の書籍を読んでみようと思ったのも事実です。
「ポジティブ」に疲れた人にお勧めです。
ネガティブ思考こそ最高のスキル 著 オリバー・パークマン 訳 下 隆全 河出書房新社