バーツラフ・シュミル 書評

書評「Numbers Don't Lie 世界のリアルは数字でつかめ! バーツラフ・シュミル」【イメージと現実は異なる】

次の点についてお伝えします。

・この本の気になった点を3つご紹介

私自身、ビジネス書、技術系書籍などを年間少なくとも100冊くらいは毎年読んでおります。
そのため、本棚には2000冊以上あります。

少し前に流行った「FACT FULNESS」と系統的には似ているように思います。
世の中を、技術、食べ物などを切り口にしていますが、技術に割とページを割いているところが特徴といえます。

世の中的には良い方向だと思われていることも、原子力などのように時間が経つことでそうではなくなっていることも数多くあるし、今でもそれにあたるものはあるよ、という視点を与えてくれます。

この記事は1、2分で読めますので、もしよろしければ目を通していただければと思います。
目次を最後に載せております。

書評「Numbers Don't Lie 世界のリアルは数字でつかめ! バーツラフ・シュミル」【イメージと現実は異なる】

Numbers Don't Lie

著者 バーツラフ・シュミル
出版 NHK出版
翻訳 栗木さつき、熊谷千寿
2021年3月25日 第1刷発行

フェイクミートを作る前に食品ロスをなくせ

国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界では毎年、根菜、果物、野菜の40~50%、魚の35%、穀物の30%、油がとれる大豆や菜種などの油糧種子、肉、乳製品の20%が廃棄されているという。つまり、全世界で生産・採取された食料の少なくとも3分の1は廃棄されているのだ。

出典 Numbers Don't Lie P.123

このフードロスについては、先進国においては深刻に見えないけど、深刻な問題といえます。
深刻に見えないというのは、あまりに安価に肉が手に入るからです。

鶏肉なども、ご存じの方も多いと思いますが、動けないようにして、品種改良して歩けないくらい短期間に太らせて食肉としています。
これが自然の食事のわけがありません。

ファーストフードやコンビニで200円、300円で手に入るにはそれだけの理由があります。

その生き物の命をいただいているにも関わらず、安いからといって捨てていいわけではないはずです。

もちろん、長い目で見ていけば大豆などを利用したフェイクミートは進んだ方がいいでしょう。
2005年頃に、ケニア出身のマータイさんが"MOTTAINAI"(もったいない)を世界に広げることを提唱しました。

アメリカでのフードロスは1974年から2005年の間に50%も増加していて、約40%が廃棄されています。
現在のフードロスで2億人以上の食料を提供できる量です。
それだけでなく、アメリカではBMI30以上の肥満率は1962年の13.4%から2010年の35.7%に増加しています。

肥満はアメリカだけの問題ではなく、日本も実は肥満大国です。
BMI25以上なので、アメリカの基準とは異なりますが、日本生活習慣病予防協会によると、2018年で男性は32.2%、女性は21.9%とのことです。

フードロスが多く、肥満が多いというのは誰もトクをしていないことになります。

廃棄されているだけでなく、生産されるためにはたくさんの命とエネルギーや水が使用されています。
これは窓を開けてクーラーをつけているようなものです。

まずは、食べる量を極力減らすところからなどできることは多いです。
そもそも、私たちは過食気味なわけですから。

携帯電話と車、環境に悪いのはどちらか?

世界で出荷される新車の総重量は、ポーターブル電子機器の総重量の180倍以上多いものの、製造に要するエネルギー量は7倍程度にすぎない。
意外なのはそれだけではない。もっと驚くようなちがいもある。ポータブル電子機器の寿命はあまり長くはなく、平均すると2年程度。よって、全世界のそうした電子機器の製造と使用に要するエネルギーは、1年当たり約0.5エクサジュールとなる。これとは対照的に、乗用車は10年はもつから、全世界の自動車の製造と使用に必要なエネルギーは年間0.7エクサジュールとなり、ポータブル電子機器より40%多いだけだ。

出典 Numbers Don't Lie P.180

これは結構、意外な視点でした。
車は悪者というイメージはありますが、実は発展途上国ですら普及しているスマホは結構問題だという点です。
この章の後半にも書かれているのですが、スマホは単体で使えるものではなく、ネットワークやサーバーなど各装置を必要としています。
私たちは、スマホを2年に1回交換する人も多いと思いますが、本当にその必要があるのか。
メーカーは買い替えを促すために、OSのアップデートを繰り返しますが、それに踊らされているだけではないのか。

私は電子機器も車も大好きなので、同じものを長く使えと言われたら寂しいものを感じますが、スタイルは変わっていくでしょう。

そもそも、この本の他の章に書かれていますが、小型車に1人で乗るのではなく2人で乗るだけでエネルギー効率はかなり改善されるようです。大型SUVに1人や2人で乗るのはその3倍くらいになるようです。この記事では紹介しませんが、電車や高速鉄道、飛行機などとの比較も載っていて興味深いです。

奇跡の1880年代

人類史でもっとも創意工夫に富んだ時代は1880年代だったのではないかと、わたしは考えている。そもそも電気と、動力を生み出す内燃機関の発明ほど、現代世界の基盤をつくった画期的かつ根本的な発明はないはずだ。

出典 Numbers Don't Lie P.290

ついつい、2000年頃からのインターネットやAIの普及によって、時代は一変したように感じます。
でも、この本に載っている1880年代の発明は、発電所、蒸気タービン、自転車、ボールペン、電動式エレベーター、電波と多岐にわたっています。

1880年代に関わらず、私たちの身の回りのほとんどのものは、約100年前の登場時から形を変えていません。
自動車、飛行機、カメラ、電車など、少し考えるだけで、動力が電気になったり、デジタル処理できるようになっただけで何も変わっていません。

飛行機にいたっては動力もエンジンのままで、飛ぶ仕組みすら同じです。

このほか、モーターについての紹介やディーゼルエンジンの優れた点などについても紹介されています。
技術面に多くページを割いて世の中の流れを書いている本でとてもわかりやすいです。

余談ですが、少し私の考えを書きますと、「動くもの」は「動かないですむ」ようになる流れがあります。
簡単に言えば、レコードがテープになり、CDになりましたが今ではメモリーに書きこまれるようになりました。
つまり、動作部分がなくなっています。

PCでいえば、かつてはデーターレコーダーといったテープに保存していたものが、FDDになり、MO(光磁気ディスク)やHDDになり、やがてSSDになりました。

このような形で「動くもの」は「動かずに」同じ効果を生むようになる流れはあると思っています。

そういうところでは飛行機が飛ぶのも、車が移動するのもやがて、動力がなくなっても移動できるようになり、さらにワープじゃないですが、物理的に動かなくても移動できる時代は来るはずです。この奇跡の1880年代にあたる奇跡の2xxx年代が来るのでしょう。

350ページある分厚い本ですが、内容は結構わかりやすく読みやすい本です。
もしよろしければ、手に取っていただければと思います。

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